「学び」という希望 ―― 震災後の教育を考える ――
著者はご存じ「尾木ママ」。教育運動のなかでも、独特の位置にいて、むかしから、メディアでの発言力を重視して、そのことをもって、教育の国民的な議論を前に進めようという役割を自認してきた人だと思う。その尾木さんにとっても、バラエティーに出演するようになり、「尾木ママ」と呼ばれるようになってからの変化は劇的だというのだ。たとえば、いま彼の講演を聞きに来る人は、以前から尾木さんを知っている人は1割以下だというのだ。学校づくりもふくめ、教育の問題というのは、政治的な問題とちがって、多くの人による合意が必要でもある。だけど、実際には、ボクらが日常的に教育の問題で相手にしているのは、きわめて限られた範囲なんだということを痛感させられる。だれもが思っている教育にかかわる疑問や悩みをどうわかりやすく、共通の言葉として語っていくか。参考になる尾木ママの話である。
たとえば、3・11後、あらためて教育のあり方が問われて。現実の子どもの姿、とくに自己肯定感の低さという現実を見れば、いまの教育のままでいいとは思えない。子どもたちが生きていくために求められる教育になっていかなければならないというのは、実感にもあっていることだ。そのために学校が変わらなければいけない。
だけど、尾木さんも、現場を離れてだいぶたつせいだと思うけど、一方で、議論は荒っぽい(笑い)。子どもの現状の分析や学校の分析も。
三章はいちばん読せる部分だけど、OECDの議論など、ほんとうはもっとていねいにしてほしいところだけど、ブックレットという制約もあるのか。だけどそういうなかで、個に寄り添う教育として語る内容の基礎に、親の願いや、子どもの思いというのがしっかり組み込まれているところが、なるほどなあ、いま、どのように変わっていかなければいけないのかについて、説得力ある提起になっていると感じたのだけどね。
最後は、井上ひさしの、例の釜石小学校の校歌で終わる。尾木さんの教育観がつまった一冊になっていて、おすすめではあるんだよなあ。
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