絶望の国の幸福な若者たち
批判の多い一冊。だけど、何人かの年配の人が若者論の必読書としてもちあげる。気になるのは、その人たちは、この本を読んでいないのではないかということ。若者の言葉をちゃんと聞きもせずに、若者について、適当に論じる。そういう無関心さが実は根底にあるのではないかと思えてくる。
さて、その若者の当事者が、若者をどう語っているのか。たぶん、この本は批判するのはたやすいだろうなあ。
若者論の歴史をふり返ったところは、都合のいいつまみぐいとしか思えないし、いまの若者の実態を統計でおったところも、彼の問題意識にもとづいて、その資料がならべらえているという印象が強い。後半の若者の姿を聞き取りなどで、追ったところは、前作と同様で、正直いって主観的な切り取り。たぶん、そんな批判は本人も承知で書いているのだろうなあ。
全体を読んで、いちばん感じるのは、個々に彼がとりあげている問題というのは、一面あたっているのだろうなということが多いんだけれども、なぜ、そこで、思考をとめてしまうのか、なぜ、さらにそこから考えないのかということがあまりにも多いこと。たぶん、その先を見ないでおこうとしているのか、もしくは彼には見えないのか。どちらだろうか。書き方の挑発さは後者のようにも読めるけど、前者だろうか。だって彼自身、大きな物語と小さな物語のあいだに身を置き、悩んでいるように見えるから。そこで、立ち止まって悩んでいる。だから彼がどうしたいかも、どう考えようとしているのかも見えてこない。
古い世代の思考であっても、いろいろ社会を見てきたからいえることもある。彼の見えない問題を見たきたからこそ、社会をもっと複合的、総合的、構造的に見る視点があったりする。批判するよりも、どうしたらもっといろいろ考えをめぐらせるのか、見えないことが見えるのか、そんなことをいっしょに考えたいような気もするのだけれどね。まあ、お節介だと言われるのはわかっているけれども。
内容的には、おいおいふれることもあろうから、感想はとりあえず、ここまでで。
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