犠牲のシステム 福島・沖縄
とても敬愛し、信頼する高橋哲哉さんの久々の著作。いろいろおしゃべりをさせていただいている。とても知的な語りをする人だけど、この本は(この間の同じテーマでの講演でも感じたことだけど)、むしろ福島の人間として、実直に、正面から問題を語っている。そこには、躊躇もあると正直に語っている。
国家による犠牲のシステム。靖国以来、それが彼のテーマだけど、今回は、福島がその犠牲のシステムだというのが本書だ。それがどういうことかという分析は、実際に、本を読んでいただくとして、考えたのは、犠牲のシステムをどう理解するべきかという問題だ。そこには、犠牲を強いる人と、犠牲になる人がいる。ただ、福島にしろ、もう一つ、簡単ではあるがこの本でのべられている沖縄という犠牲のシステムというのは、象徴的だ。いわば経済によって犠牲を強いられる地域と、安保によって犠牲を強いられる地域。そしてそれは地域だけの問題ではないだろうしなあ。
ならば、それは支配されるものと、支配するものと言い換えることもできるかもしれない。いま、一昔前にはすっかりはやらなくくなったといわれたよう社会観があらためて、見直されている、そういうことのできるような気がする。
ただ、それは民主主義によって是認される支配であるかぎり、それは責任のレベルはちがっても多数の国民にも責任は生じる。それはこの本の言うとおりである。だから、本書は、犠牲を強いるのは多数であり、犠牲になるのは少数だ。だけど、支配者は少数で、支配されるのは多数だ。それはオキュパイをみてもわかる。その差異がもしかしたら大事なのかもしれない。犠牲と支配のあいだにあるある種の錯覚、この乖離をうめることが、民主主義の課題、問題解決の道筋なのかもしれないなどもと考えながら読んだ一冊であるのだけど。正面からの問題提起には、しっかり考えたいと思わせてくれる本だと思う。
« 県民に沖縄返せ 米誌「フォーブス」に論説 | トップページ | かすむ「資本主義改革」=欧州危機が影-ダボス会議閉幕 »
「読書」カテゴリの記事
- 書評会『教育DXは何をもたらすか―個別最適化社会のゆくえ』(2023.09.10)
- 「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」(2023.08.05)
- 『朝鮮戦争 無差別爆撃の出撃基地・日本』(2023.08.02)
- 維新の馬場さんの発言をめぐって(2023.07.25)
- 『国籍と遺書、兄への手紙: ルーツを巡る旅の先に』(2023.07.20)
「政治」カテゴリの記事
- “冤(えん)罪”の深層〜警視庁公安部で何が〜(2023.09.25)
- 性犯罪歴確認の「日本版DBS」法案、臨時国会への提出見送りで調整(2023.09.24)
- 全国に蔓延する「刑務所の食事よりひどい給食」の実態 エビフライはゼロになり、急増したのは切り干し大根…(2023.09.23)
- 岸田首相 来週前半に物価高など受けた経済対策の柱を示す方針(2023.09.21)
- 辺野古の地盤工事 国は沖縄県に承認を勧告 期限は27日(2023.09.20)
「経済」カテゴリの記事
- 性犯罪歴確認の「日本版DBS」法案、臨時国会への提出見送りで調整(2023.09.24)
- 全国に蔓延する「刑務所の食事よりひどい給食」の実態 エビフライはゼロになり、急増したのは切り干し大根…(2023.09.23)
- 岸田首相 来週 経済対策の柱示し10月中めどに取りまとめの考え(2023.09.19)
- バス運転手、2030年度に3.6万人不足 24年問題も影響(2023.09.18)
- 初の「女性ゼロ」…副大臣・政務官は男性ばかりの記念写真 岸田政権、政府の女性活躍目標に逆行(2023.09.16)
「沖縄」カテゴリの記事
- 辺野古の地盤工事 国は沖縄県に承認を勧告 期限は27日(2023.09.20)
- 戦争を笑え~命ぬ御祝事さびら!沖縄・伝説の芸人ブーテン(2023.09.07)
- 10月号ができました(2023.09.05)
- 【速報】辺野古訴訟、沖縄県の敗訴確定 最高裁判決(2023.09.04)
- 「怪獣使いと少年」と「集団の“狂気”なぜ ~関東大震災100年“虐殺”の教訓~」(2023.08.30)
« 県民に沖縄返せ 米誌「フォーブス」に論説 | トップページ | かすむ「資本主義改革」=欧州危機が影-ダボス会議閉幕 »
コメント