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2012/01/07

社会的包摂政策の成功と失敗 ~イギリスの経験、日本の希望~

 今日は、午後からは、国立人口問題・社会保障研究所の表題のシンポジウムへ。この研究所は、独法ではなく国の直営。厚生労働省の外部部局である。独立行政法人日本学術振興会とイギリスEconomic & Social Research Councilとの二国間交流事業としておこなわれた。
 まず、ブリストル大学のデビッド・ゴードン教授が「イギリスの社会的包摂政策:成功と失敗」と題して、基調講演。イギリスにおける社会的包摂においてどういったものが成功し、どういったものが不発だったのかについて語る。貧困とは普遍的概念であり、あらゆる社会に存在する。貧しきものは親族からも縁を切られるという日本の格言はうまくとらえているとも。イギリスでうまくいった施策は、ブレアの子どもの貧困をなくす公約。さまざまな措置が発表され、立法化され、子どもの貧困法 あらゆる政党が支持した。明確な目標、4つの指標で明確に定義。
 そもそも貧困は撲滅できる 比較的最近。かつては必要悪。フランス革命で台頭。年金、手当などで。福祉社会国家概念400年前にすぎないと。しかし、それも当時は、そんなことを実現できるわけないとうけとめられていたが、しかし、それは先見だった。
 では、貧困とは何か。物質的、文化的資源が限られ、社会的に排除された家族。タウンゼントがあきらかにした相対的貧困の概念だ。欧州ではどのように貧困を測定しているか。それは低所得だ。サッチャー政権のもとで急増し、中央値の60%以下の層が8%から25%まで拡大し、とくに最下層の人がお金を失っていった。所得格差が高止まり、さらに上昇している。原因はなにか。税制が累進性でない。高所得10%は35% 低所得は50%にも。
トップ1%の富裕層に富の配分が大きく増えている。アメリカが典型。
 17、18c撲滅が目的でなく、飢餓からの救済が目的だった。貧困対策をすれば働かなくなると考えられていた。19cは貧困は自業自得と考えられた。なぜそうなったか教訓をわからせることが力点だった。20c必ずしも、その人の性ではなく福祉国家概念が形成された。撲滅は、最近になって掲げられるようになった。イギリスの社会不安は金融危機としてひろがる。銀行の資産価値の縮小し、1年分のGDPに匹敵する資産価値がなくなってしまった。失業、若者の孤立から暴動へ。
 何を学ぶのか。貧困、死亡率高い、成績、仕事、一連の負の連鎖。平均寿命が短い。撲滅の費用は必ず相殺出来る。ただしその成果は子どもが成長した後。
 さまざまな支援が展開された。とくにシュアスタート。子育て戦略の確立。シュアスタートはもっとも成功した政策の1つ。これは政策の狭間分野だった。省庁の既得権益もなく。2つの世代をまたぐ、烙印付をおこなわなかった。多面的なとりくみがすすみ数年間で5億ドルの予算に。親が有償労働につき、親に大きな変化。包括的な戦略がおこなわれているウエールズが典型。
 日本にとって何を重要か。日本は、人口問題で100年で大幅に減少。もっとも高齢者の多い国に。社会的な影響が。独居老人が急激に増えている。いま500万人。社会的に孤立。老人の社会的排除がすすんでいる。社会包摂政策がキーに。道は2つ何もしなく消滅してくか、女性の社会進出、働きやすく、子どもを育てやすく、子育てのコストを下げる方向か。

 続いて、湯浅誠さんが「日本の社会的包摂推進室の試み」と題して基調講演。最初に、社会的包摂とは参加のバリアーのある人を参加させるものとして、就労による包摂から考える。しかし就労していたらいいのかと問う。必ずしも生活の質を上げない場合もある。たとえば貧困層の就労世帯。社会に包摂されているわけではない。それは非正規雇用が典型と。
 そう考えていくと高齢者、子どもの貧困などトータルに考える必要があると。
 とくに包摂の対象として考えているのはだれなのか?日本型福祉社会から取りこぼされた人と言えるのではないかと言う。
 日本には、甲斐性なしという言葉があるが、稼いだ金で子育て費用を出すなどの考えが強い。そして、それを企業福祉が支える。結局そうなるととろこぼされる人は、現役世代で企業と家族に支えられない人と高齢者で支える人がいない人、そういうひとがふえてきた。
 3つの傘がこれまであった、国の傘が企業を。企業の傘が正社員を、その正社員が家族を、それが30年間急速にしぼんできた。雨に濡れる人がふえてきた。その傘の外にいる人たちが社会的包摂の対象。中と外の圧倒的なちがい。世間体が違ってくる、中のひとはちゃんとやっているひと、外の人は何をやっているのかと。
地縁血縁社縁が男性の場合は連動する。それが世代を連鎖していく。階層的に固定化。出会ったことがない。2つの世界。統合上の大きな危機。しかし、そう考える人が増えないとそういう政策の打たれない。
 ところがそもそも社会的包摂の定義がはっきりしていない。どの政策が社会的包摂政策なのかを決める主体もない。新成長政略 就業率あげる、再生政策 包摂 言葉として入っている。言葉だけのころのこるのには意味がないが、残ると残らないとではちがう。まだ社会的包摂が生まれたばかりの初期段階ではしかたがない。
 そこで、パーソナル サポートサービスをはじめた。これはホームレス、DV、自殺対策、いろいろな分野が立法なり対策をつくってきた。おおくくりに考える。制度にのっかっていかいひとのための制度、とっかかりとして、相談支援的なところからはじめていくと。

 貧困は、資本主義のありようが有無。原理的にいえば、相対的過剰人口の形成というか。しかし、資本主義はその矛盾を緩和するためにさまざまな制度がつくられてきた。雇用政策の一方で、社会保障などが。社会的法政というとらえ方がされるのは、そうしてつくられた社会の実態に対応するということができるのかもしれない。たとえば、貧困の入り口は、言ってみれば、教育からの排除のケースが多いわけだけれども、これは雇用や就労からも接近できるが、社会的排除の角度からの接近もできる。
 社会の中で、どのように合意をつくっていくのかという問題とともに、なぜこういう社会的排除がつくられていくのか、その根底にある貧困の問題にメスをいれるのは重要。その関係などについてもいろいろ考えさせられる。ほんとうに勉強がたりないなあと痛感させられるが、そんなに簡単に答えはないのかなあ。そもそも、そういう広いベースで議論するような土俵はなかなかない。なんというか、それぞれの場で、別の議論になっている感じがする。今日のようなシンポジウムには、労働組合の人ってほとんど来ないしなあ。

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