孤立集落 どっこい生きる
一カ月ほど前にNHKスペシャル。今週、再放送があるようなので、見逃した人はぜひどうぞ。
未曽有の被害を出した東日本大震災。壊滅状態になった漁村のなかで、国の復興施策を待ちきれず、村人自ら再建に乗り出した集落がある。旧歌津町(南三陸町)の馬場中山集落。壊滅した集落を見下ろす高台の小集会所で200人が避難生活を続けてきた。がれきから砂まみれの米を拾い集め、掘り起こした冷蔵庫から野菜を回収して生きのびた。
村人たちは全国のボランティアと連携し、食料やトイレや風呂を次々と手に入れてきた。もともとの避難所を上回る規模の新しい宿泊施設まで村人総出で完成させた。道路を拡張し安全な高台に集落を移す集落移転計画。中古漁船を集めて漁港を復活させる新漁村計画。インターネットの発信力と被災後に築いてきた善意の人脈との絆を武器に、漁村復興に必要な知恵と物資を自ら集めようとしている。
震災は大自然の強大な力の前では非力な人間社会の姿をさらけ出した。だが「孤立集落」の挑戦は、いかなる困難のもとでも再び立ち上がる人間のたくましさと強さを感じさせる。笑顔を絶やさず再起への道を一歩ずつ歩む200人の挑戦の日々を追い、被災地の人々に勇気と活力を与える。
避難所から住宅の再建にむけ、自分たちの地域のつながりを守りながらおしすすめようという人たちがいる。自分たちの生業の復興も、自分たちの手で進めている。行政が何もしないからだ。
その行政は、復興の名による、集中と選択をおしすすめようとしている。上からの大型プロジェクト型の。しかし、この三陸の地が、小さな港が点在し、そして、そこに1つひとつ独自の漁業が発展し、人々はそれぞれの生活と文化をはぐくんできている。効率という名の大型開発で復興をすすめようという人たちには、そんな一つひとつの地域は目に入らない。だから切り捨てられようとしている。港の瓦礫の処理から、道路づくりまで、すべて自分たちがすすめる。インターネットで全国からの支援をよびかけながら。
もちろん、都会にすむ、ボクらには、この親密さは、ちょっと息苦しいのかもしれないとも思う。だけど、このとりくみが復興のあり方に問いかけてる問題はとてつもなく大きい。それはいまの日本の社会のあり方そのものも問いかけているようにも。
同時に、福島の地にも思いをはせた。その地の人々の思いが複雑だ。復興をすすめようという人には、避難を封じ込めるという批判がよせられる。避難しようという人には”裏切り者”とまで。そんな分断のなかに生きている。だけど、命を守ろうという思いも、一方で、故郷を復活させようという思いも、それはそれで理解ができる。というか、たぶん一人ひとりのなかに、複雑に存在する。だから分断が酷いのだ。そして、1つの決断は、たいへんな思いの決断でもあるのだろうな。それだけに、そういう複雑な思いも含めて、ボクらは受けとめないといけないと思う。表面的なところだけ見て、いろいろ論評することになってはいないか、よく考えたいとも思う。
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