「坂の上の雲」と日本近現代史
NHKのドラマの第三部も佳境に入ってきたけれど、ドラマのほうは、完全に戦争再現ドラマになっている感じ(苦笑)。そういうときに出版されたのが、原田先生のこの本。司馬さんの議論をどう評価するのかはとても難しくて、左翼というか、マルクス主義歴史学者の手によってもいろいろ議論があるし、文学に関係の人もなおさら。
さて、この本は、その点でも、ちょっとユニークなもの。最大の特徴は、近現代史の通史として、幕末から戦争の事態を描きながら、その時代を、司馬さんがどのように認識し、作品に描いていたのかを問いかけるものになっていること。そのように見ていくと、俗に言われるように、必ずしも、司馬さんは、明治を明るい時代として認識していたわけではないことがわかる。だけど、朝鮮半島の植民地支配の経過、東学党の乱への弾圧や旅順虐殺、明成皇后殺人事件などを欠落させる。日露戦争についての司馬さんの見方についても厳しい。
しかし、日露戦争の勝利から、その後の日本社会の展開、アジアへの加害者となった日本への司馬さんの視線は、厳しい。
著者の司馬さんへのまなざしは優しい。というか、戦後社会への信頼も含め、司馬さんの視点を肯定的に受けとめている。司馬作品を愛する人々のなかには、そういう未来への健全なまなざしがあることを、いま確信をもち、共有していくことが大切だというのが、著者の思いなんだと思う。
« 路上生活:予備軍4万人 官民自立支援歯止め--NPO調査 | トップページ | 新たな福祉国家を展望する »
「平和」カテゴリの記事
- 「日米軍事同盟・「戦争する国」づくりの新段階」 日米の統制の一体化などなど(2024.09.14)
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 沖縄県の原告適格性、二審でも認めず 県は上告を検討 高裁那覇支部 新基地建設を巡る県と国の14訴訟で最後の係争案件 玉城デニー知事「残念」(2024.09.03)
- 自衛隊、宮古・八重山や奄美に新拠点検討 2025年度の概算要求 訓練場や補給の適地有無を調査 2027年度には那覇に対空電子戦部隊(2024.08.31)
「読書」カテゴリの記事
- 10月号ができました(2024.09.11)
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
- 木原稔防衛相、終戦の日に靖国神社に参拝 韓国「時代錯誤的」と反発 :「ニライカナイには行けない」(2024.08.15)
- 9月号ができています(2024.08.12)
- 『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』と「島守の塔」(2024.07.28)
「政治」カテゴリの記事
- 「日米軍事同盟・「戦争する国」づくりの新段階」 日米の統制の一体化などなど(2024.09.14)
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 10月号ができました(2024.09.11)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 赤旗日曜版にJCJ大賞 自民派閥の政治資金不記載(2024.09.09)
「歴史」カテゴリの記事
- PFAS 公害裁判 そしてトラツバ(2024.09.12)
- 10月号ができました(2024.09.11)
- 「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」(2024.09.10)
- 関東大震災の朝鮮人虐殺、否定論やまず 公的記録、相次ぐ「発掘」(2024.08.30)
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
コメント