コタ・バル~伝えられなかった戦争~
日曜日の深夜、TBS系で放映された短いドキュメント。
“アジア太平洋戦争の始まりは、旧日本海軍によるハワイ真珠湾攻撃”―多くの日本人が、そう思っている。でも実際は、真珠湾攻撃より1時間以上も早く始まったマレー半島コタ・バルでの敵前上陸によって戦争の火ぶたは切られた。
武田義雄さん(90)は、18歳の時に久留米にあった第十八師団の歩兵連隊に入隊。初めての実戦がコタ・バルでの敵前上陸だった。
「もうトーチカからどんどん撃ってきてですね。背中に背嚢や、米や弾薬を背負ってましたけど、その背中に敵弾がブスブスと当たりました。」
日本軍が初めて敢行した敵前上陸は当時の国民を奮い立たせた。福岡県出身の洋画家・中村研一が描いた「コタ・バル」の戦争記録画は全国で喝采を浴び、その快挙は小学校の教科書にも掲載された。しかし終戦後、「大東亜戦争」から「太平洋戦争」へと呼び名が変わり、敵前上陸を称えた教科書のページは墨で黒く塗りつぶされた。戦史に刻まれるはずのコタ・バルの名は、開戦から70年を経た今も歴史の闇に埋もれている。
教科書で、「太平洋戦争」と表現される戦争は、真珠湾ではなく、その一時間まえのコタ・バルからはじまる。まあ、それ以前にも宣戦布告のない戦闘がくり返されているのだけれどね。しかし、戦後、太平洋戦争と命名されることで、マレー上陸からシンガポールでおこなわれた占領・虐殺の残虐行為は、語られることはなくなった。とくに抗日が激化していた中国戦線との関係で、中国系住民はスパイとして虐殺された。あらためて、12・8を前に、その歴史にスポットをあてる。つくったのは、その戦闘をになった菊兵団のあった九州の地方局。
中村研一の戦争画は、藤田嗣治とならんで有名だけど、やっぱりこの残虐リアリズムは、人間的退廃であり、美術的に評価したくない。
兵士のほんとうの姿は語られはじめたが、それでも、なかなか語られない加害の戦争の全体像。そのことと正面から向き合おうとする作品で、好感がもてました。
関西地方ではMBS毎日放送で12月11日(日)午前5:00-5:30に「JNNドキュメンタリー@にっぽん」で放映されるそうです。ぜひ。
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