近代天皇制国家の歴史的位置
先ごろ惜しまれながら亡くなった安田浩先生。その訃報はびっくりした。まだ、現職だし。その天皇制研究の集大成というべき一冊である。
タイトルにもある近代天皇制の定義、いわゆる絶対主義天皇制との関係など、どう受けとめたらいいのか、まだまだわからないところはないでもない。政治的な言葉として使われる絶対主義天皇制と、こういう概念規定についてはもっと勉強したい論点もあるけどね。
だけど戦前から戦後直後、天皇のはたした政治的役割や、戦後、天皇の政治的権限がなくなったいまもなお、保守勢力が、なぜその権威主義的な統治の主柱して天皇イデオロギーを活用しようするのかなどについての著者の指摘には学ぶところが多い内容。日本の保守主義は、いまなおイデオロギーとしての天皇制というものを支えにしていることは否定はできないのだから。
とりわけ、近年、天皇の戦争責任について、天皇制がイギリスと同様制度として、それを回避する主張が、ふたたび強調されている。書店などでも平積みされている。伊藤之雄さんの議論などがその典型だけど、本書は、戦争における天皇による国家意思決定をていねいに追いながら、これを批判している。
ざっと読んだ一冊だけど、天皇制研究がいまなお大きな意義をもつことを教えてくているなあと。
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