米軍属裁判権 「運用改善」納得できぬ 地位協定抜本改定が筋だ
例の軍属は、遺族や支える会のたたかいの結果、やっと起訴(在宅)された。だけど。次は、琉球新報の主張から。
米軍属裁判権 「運用改善」納得できぬ 地位協定抜本改定が筋だ(琉球新報)日米両政府は、米軍属による公務中の死亡事故など重大な事件・事故について日米地位協定を運用改善することで合意した。
米側が刑事訴追せず、日本側の裁判権行使に「好意的考慮」で応じれば、日本側で訴追できるという内容だ。
今回の運用改善によって、米軍属の公務中の犯罪について日米双方とも刑事裁判を実施しないという「空白状態」は一応、改善される見通しだ。
遅きに失した印象は拭えないが、一定の前進と評価はできよう。◆米の裁量権優先
米軍人、軍属の「公務中」の事件・事故は地位協定によって、日本側は裁判権を放棄している。ところが第一次裁判権を有している米側はこれまで軍属を軍法会議にさえかけてもおらず、刑事罰が科せられていないケースが多かった。
2010年までの5年間で「公務中」とされた事件・事故62件のうち、軍法会議にかけられた事案はゼロだったということも明らかになっている。
米軍を受け入れている国として、国内で犯罪を行った軍人や軍属を国内法で裁くのは当然の話だ。
日本側の裁判権行使は、あくまで米側の好意的考慮が前提となっているのは問題だ。
米国民を有利に扱う恣意(しい)的解釈の余地を残す、またしても例外を設ける形での運用改善だと言わざるを得ない。最終的に米側の裁量権が優先されかねない可能性を残している。
1995年の少女乱暴事件後、殺人、強姦(ごうかん)など凶悪犯罪では日本側に身柄引き渡しができるよう運用改善され、その後日本側が重大な関心を持つ「いかなる犯罪も排除されない」と確認されている。
だが、95年以降の適用はわずか2件だけで、運用改善は形骸化していると指摘されている。運用改善では限界がある。
米兵と米軍属が起こす事件や事故が公務中だった場合、日本側は起訴できないことは、地位協定の不平等性を象徴するものとして批判され続けてきた。
今回の合意でも、公務中の犯罪は米側に第一次裁判権があるという地位協定の規定は手つかずのままだ。公務中の犯罪は引き続き米側が裁判権を有する。
米軍が権利放棄した時だけ適用する運用改善にとどまっており、県民が納得できるものではない。「死亡事故や重大な交通事故については、米側で刑事訴追しなければ日本側が裁判権行使を要請できる」とした枠組みでの合意は、時間の経過とともに形骸化していくとの懸念は消えない。
重大とは一体どの程度の事故なのか。けがの程度などで日米双方の見解が異なる場合も想定される。その際の扱いをどうするか。極めてあいまいな部分を残している。……
軍属の公務中について、アメリカで裁判がおこなわれないときに、殺人罪などの重要事件については、日本側に裁判権をわたす運用改善がなされるという話。今度、それが適用されて、起訴されたのは大事なことだけれども。そもそも、アメリカでは、軍属を平時は裁判にかけないと言っているのに、なぜ、運用で、アメリカの善意による考慮にとどまるのか、さっぱり理解できないのが普通の感覚。アメリカの裁量であるのは、いまと何も変わらない。ただ、沖縄などの住民の反発をみながら、こういう事件ではということになる。
そもそも、日本のなかでの米兵犯罪で、なぜ、日本に裁判権がないのか。ここが問われないのはなぜなのか。なぜ、重大事件に限定するのか。そのことによって、実質的にはほとんど現状とかわらなることは、公務外での刑事事件の例があらわしている。
地位協定の抜本改定が、基地の町の願いである。
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はっきりいって、沖縄は日米地位協定の抜本見直しを求めているけど、つまるところは米軍保護の協定だったらいっそなくしてしまうか、協定を結ぶなら本当に日米が、というより沖縄県民の命と財産が守られる、対等平等な内容にしろ、ということを要求する。民主政権にそんなことはできっこないから、いくら「成果あげましたよ」ヅラして玄葉が来ても、県民は「よくやったね」などとほめてやったりはしない。何を今さら、そんな最低限なことを、と思うだけ。もちろん「辺野古もいいですよ」などとも認めたりはしない。
投稿: いくぼー | 2011/11/27 14:33