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2011/09/22

イギリスに学ぶ子どもの貧困解決 日本の「子どもの貧困対策法」にむけて

0458 なぜ、この問題の解決は、なかなかすすまないのだろう。正直言って、この課題にとりくみはじめたとき、もう少し事態は変わるのではないかと思ったけど。そんなふうに感じている人も多いのではないだろうか。だけど、最近、発表された貧困率でも子どもの貧困は15・7%となり、史上最悪の事態だ。しかも、震災である。だけど、だからこそ、あとがきの湯澤さんの文章にあるように、この本とともに、考えたいとも思う。

 この本では、日弁連の人たちのイギリス調査の報告で、イギリスでは子どもの貧困対策がどのようにすすめられているのかが報告される。次に日本の研究者による解説で、とりわけその軸となるショア・スタートなどの解説である。たしかに、イギリスの制度がそのまま日本に通用するわけではない。そもそもイギリスの制度なんてころころ変わるので有名な国だ。しかも、新自由主義の最先端を行く国で、いまの福祉国家型とは少し外れている気もする。日本とは、福祉の制度という点ではかなりちがうし。だけど、この本を読んでいると、やはり学ばなければいけないと思う。イギリスで子どもの貧困対策の中心をになったフランさんが、対策への経過を紹介する。そこから学ぶことは何なのだろうか。

 それは、何よりも、貧困とは何か。この点での考え方についての議論と合意。いわば国民的な思想というか、そういうものの形成の大事さである。日本でもそうだけど、子どもの貧困は、子どもの問題だから、合意がとりやすいと考えがちだ。たしかに未来を生きる子どもたちの権利を保障する点からも、そのことは間違いではない。だけど、同時に、大切なのは、なぜ、そういう貧困があってはならないかということへの合意なのだ。それは、○○の貧困ということで、貧困に差をつけたり、排除したりすることでは決してない。そうした合意を、イギリスの貧困の伝統を背景に、調査にもとづいてすすめる。これはとても大事だと思う。
 イギリスがたどった政策形成、その継続性、つまり子どもの貧困と若者の貧困の継続性と、若者の貧困が親世代の貧困と同義であり、連鎖につながるという点で一体の問題であるということのうえでの、継続的なとりくみや、包括的なとりくみ。ここには調査の力と貧困へのしっかりした考えがあるという印象をうける。
 そしてそれを支える多様な運動の広がり。運動をになう人たち、それを支える社会的な基盤というものがあるのだろうなあ。そういう意味では、中嶋さんや山野さんの示唆の多い文章を、もっと突っ込んで議論してほしいものだなあ。

 とても短い、昨年のシンポをもとにした報告集だけど、これからの議論と運動にとって、とても勉強になる本でもあったのである。

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