ルポ 職場流産―― 雇用崩壊後の妊娠・出産・育児 ――
子どもが相方のお腹にやどったとき、いろいろな思いをした。不安に思ったこと、無茶苦茶うれしかったこと、それから25年もたつのか。あっという間でもあり、ずいぶん昔のことのようであり。その間、ほんとに必死で生きてきて、でも後悔もたくさんあり、楽しいこともたくさんあり。だけど、そんな親として生きること、その前に、その選択をすることがどれだけたいへんなことになっていたのだろうか。
第Ⅰ部の3つの章では、そもそも妊娠して働き続けことができない状況になっていること、非正規のになって働き続けても母体が危機にさらされるような状況にあること、「子どもか,仕事か」という究極の選択を迫られる現実がルポされ、息を飲む。
第Ⅱ部では、周産期医療の現実や、子どもを生んだあとにまちかまえる保育所が抱える問題が明らかにされる。たぶん、日本は、子どもにとって、大事な制度としてあったのが、母子保健と保育制度だったと思うけど、というかたたかいのあかで、それが6、70年代につくられたのだろうけれども、それがいまこんな危機の状態にある。
そして第Ⅲ部は、どうするのかという問題。社会保障を充実させるためにも、その支え手を充実させるという著者の主張は共感できる。問題はその道筋、現場の努力は、ボクがよくいく渋谷の病院をふくめ(笑い)、いろいろ紹介されているがここが、いちばんわかりにくいなあ。だけど、働くルールを法的に規制しなければいけないという主張も共感できる。同時に、労働運動が、どう規範的な影響力をもつのかが決定的なのだろうけれども。
これは、出産をめぐる人権を論じつつ、保健や保育、介護などの社会保障を論じる。同時に、その表裏一体である雇用の問題、とくに若者の雇用の問題を論じる(そう配偶者の労働が変わらないと妊婦や母親は救われない)。そしてなによりも、若い女性をめぐる問題を論じる。ボクは、仕事で20代の女性の問題を論じたいなあってずっと思っていたのだけれども。若者論がはやりの昨今だけ、雇用の問題でなかなか女性の問題が論じられないから。この点でも、この本はすごく大事な本だと思った。
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