居場所の社会学 生きづらさを超えて
バイク便ライダーで有名になった阿部さんの新著。「居場所」を論じたもので、この居場所っていうのも、なかなかその定義からして難しい。だけど、論じていることは、そんなに極論ではない。むしろ現場ではあたりまえのように語られていることであったりする。
いまの時代は、さまざまな問題が個別の個人的な問題として表出する。それをどう考えるのかは、やっぱり個別の問題への検討を通してこそはじめて可能になる。そういう意味で、個別の問題に徹底してつきあおうとするそういう姿勢は、こうした社会学的な検討から学ぶべきだと思う。しかも、阿部さんの文章は、社会的に批判的な視線もある。
だけど、そういう分析は、やっぱりある側面についての分析にとどまっていて、その問題は、社会的にはどういう位置にあるのか、そういう社会全体の構造のなかでどうとらえるべきなのかなどはやっぱり不満でもある。だけど、やっかいなのは、その当事者にとって、社会全体のなかで問題をとらえるということはとても難しいことだ。それは、ある種の答えをもちこんで、議論することは容易だけど、それでは心に響かない。そういう意味では、個別の問題からの議論を、一つひとつ積み重ねるなかで、そういう社会への認識をいっしょになって深めていくということしかないのだろうなあ。そういうことも考えさせられる。具体的な居場所の問題は、まあ、横に置いて置くけれども。
あと、Jポップの歌詞の分析の対談はおもしろかった。80年代に青年向けの雑誌をやっていたときに、当時のいまでいうJポップ(なんて呼んでいたのかなあ)の歌詞の分析なってやったことあったなあ。あまり、ちゃんと歌詞までチェックしていなかった最近の歌をまじめに読んでみるのもなかなかおもしろかった次第。
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