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2011/08/24

八重山教科書:8人 密室の激論

 八重山の教科書選定をめぐっては、その後、続報が続く。紳助のことよりこっちの方が大事でしょう。いったい全国紙はどうなっているのだろうか?

八重山教科書:8人 密室の激論(沖縄タイムス)

 「つくる会」系の教科書が選ばれるかどうかをめぐり、全国的な注目を集めた23日の協議会。「あえてマイナスの意見がある教科書を選ぶのか」「何が悪いのか分からない」。非公開の会合は、8人の委員が時に声を荒らげながら激論を交わした。(鈴木実)
 会合は午後3時に始まり、午後6時半まで続いた。会合の公開を求める住民らが詰め掛け、「中に入れてください」「禍根を残さない決定を」などと訴える切迫した雰囲気。冒頭、会合を報道機関などに公開するかどうかや、協議会委員の氏名を公表するかをめぐって採決があり、いずれも非公開・非公表とすることが多数決で決まった。
 9教科15種目の教科書を選ぶ中で、最も議論が紛糾したのは、「つくる会」系が選ばれる可能性が高いと見られていた歴史教科書。「集団自決(強制集団死)」をめぐる記述を中心に、およそ20分が費やされたという。
 「正しい史実を子どもたちに教えるべきだ」
 「歴史に正しいも正しくないもない。歴史にはいろいろな解釈がある」
 出席した委員の一人によると、「つくる会」系を推す委員と反対する委員の間で激しいやりとりがあり、結局は議論が平行線をたどったまま採決に持ち込まれた。
 その結果、選ばれたのは意外にも「つくる会」系ではない教科書。ところが、続く公民でどんでん返しが起きた。
 出席した委員の一人は「一番懸念していた歴史で『つくる会』系が外れ安心した。公民は審議時間も短く、たいしたやりとりもなかったため大丈夫と思っていたら、票を見てびっくりした」と驚く。「つくる会」系の育鵬社が最多の5票を獲得した。
 反対派の委員からは、「(協議会に報告書を出す)調査員から推薦されていないどころか、マイナスの意見も出されている教科書ではないか。あえて選ぶのはおかしい」「専門の現場教員が調査研究した結果をないがしろにするのか」など強い反対の意見が出されたという。
 一方、賛成派は「協議会委員の責任で選定すべきだ」「なぜマイナスなのか分からない」などを主張し、結果は覆らなかった。
 協議会後に出てきた委員は一様に口が固く、「会長に聞いてください」などと言いながら足早に去った。…

 この選定のあり方が、正しいあり方なのか。現場の教員の意見をここまで無視するやり方が。

 現地の平和教育をすすめる会の声明は以下の通り。

教科用図書八重山採択地区協議会の「公民教科書に育鵬社を選択」との答申に抗議し、八重山地区各教育委員会に対して、公正、適正な教科書を採択することを求める声明

 8月23日、教科用図書八重山採択地区協議会は、2012年度から同地区内公立中学校で使用する社会科公民分野の教科書について、育鵬社の公民教科書を選択したと報道されました。選定の詳細は答申の公開後に明らかにされるにしても、私たち平和教育をすすめる会としては、現時点においてこの選定そのものが不当であると考え、まず厳重に抗議します。
 社会科の公民分野は、未来の主権者を育てる義務教育最終段階の重要な科目として、憲法や政治、経済、社会のしくみを学びます。その中で公民教科書は、主権者育成の重要な教材であり、一方的な考えや政治思想を注入するようなものであってはならないものです。しかし、これまで多くの団体・個人が指摘し、マスコミ等が報じてきたように、育鵬社の教科書は数多くの重大な問題点が指摘されています。
 戦後の沖縄で米軍基地から発生する被害や事件事故が多発している実態や普天間基地の問題、基地の整理縮小について全く触れていないことは、沖縄に住む子どもたちが学ぶには不適切で看過できない欠陥です。それだけでなく人権について「いきすぎた平等意識はかえって社会を混乱させ」と平等権を制限するような記述や、「憲法は個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいて家庭生活を営むことを求めています(24条)」との記述については、研究者から「憲法24条は『家庭生活における個人の尊厳と両性の平等』をうたっているものであり、家庭生活を営むことを求めているわけではない」と指摘されているとおり,憲法24条を「家(家父長)制度」を是とするような誤った記述に書き換える等,重大な問題点があると指摘せざるを得ません。育鵬社の公民科教科書は、社会科教育がめざす「国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者」を育成することのできない教科書であることは明らかです。
 採択地区協議会では、現場教員による調査員の複数推薦に含まれてさえいなかった育鵬社を選定しました。これは、現場の教員が時間をかけ、子どもたちのことを第一に考えて授業での使い方や子どもたちの理解しやすさなどを踏まえて作成した調査研究を全く踏まえない結果を出したことを意味します。数多くの指摘がある通り、教科書は子どもに渡す大事な教材です。そしてその教材を利用して日々子どもと向き合うのは教師です。教科書は、教師と子どもとを授業を通じてつなぐ大事なツールです。その大事なツールを教師の意見を踏まえることなく決定するということは、子どものことを第一に考えた選択とは到底思えません。このことは、政府、文部科学省の指導にも反しています。
 この選定が行われたことは、やはり育鵬社の教科書採択ありきで協議会が開催され、投票行動がなされたという疑義をもたざるを得ません。全国で育鵬社が採択された他の地域でも、調査委員等の推薦から漏れたものを採択した例はありません。このように教科書採択の公正性が守られないと疑われるような選定はやはり不当です。改めて、厳重に抗議します。
 よって、当会は石垣市教育委員会及び竹富町教育委員会及び与那国町教育委員会に対し、公正な検討を行い、育鵬社の公民科教科書を採択しないよう強く要請するものです。
                              2011年8月24日
                沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会

 各教育委員会の動向が気になるところだけれども、ここは、この育鵬社の教科書の問題への認識を広げたい。

 
 だけど沖縄タイムスの記事では、「教科用図書八重山採択地区協議会(会長・玉津博克石垣市教育長)が23日、公民の教科書に選定した『新しいみんなの公民』は、これまでの歴史教科書を自虐史観に基づくものと主張する『新しい歴史教科書をつくる会』系の出版社・扶桑社を継承する育鵬社が、新たに出版した。愛国心や国粋主義などに重きを置く視点が特徴だ。 特に自衛隊関連の記述では、戦車や戦闘機、災害派遣の様子を写真などを多用し手厚く掲載、『多くの国民が自衛隊の存在を肯定的にとらえている』と紹介。一方で、在沖米軍基地に関する記述は写真1枚と2行の説明しかなく、本文では全く触れられていない。」と指摘しているのは、重要。与那国への自衛隊の配備が15年までにという記事が賑わしているが、そういう動きとも無関係ではないとても政治的な動きであるのだろうなあ。

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コメント

「憲法24条は『家庭生活における個人の尊厳と両性の平等』をうたっているものであり、家庭生活を営むことを求めているわけではない」

小職は、決して国粋主義者でもなければ、彼らが反日だと勝手に否定するところの共産主義者でもありませんので、歴史教科書検定に当たっては、どちらの立場を擁護するわけではありません。
しかしながら、上記の意見には、一体何を意味してしるのかさっぱり分かり分かりませんね。
逆に、「家庭生活における個人の尊厳と両性」をうたっているが、家庭生活を営むことを求めているわけではないと言うならば、憲法24条では何を求めているのかと言うことになってしまうし、これも、「意味論(セマンティックス)音痴」の戯言に過ぎないとしか思えません。

こんなものは、国際社会で通用する筈は無いことは当然であるものの、だからと言って、近隣諸国の反日的な歴史教育等を全て否定できるものではありません。
全てが真実であるとは限らないことは確かに限らないが、全てが嘘であるとも言えないし、何処までが真実なのか見極めて、それを子供達に伝えて行くことこそが大切なことでは無いでしょうか。

歴史的な問題に限らず、原発事故をはじめとする様々な事故やトラブル、犯罪や社会問題全てに共通することは、何と言っても問題が生じた際には、その根本原因というものを究明しなければ、再発防止に繋がらないし、その根本原因究明に当たっては、何と言っても真実から目を背けてはならないし、それが例え、どんなに辛いことであったとしても、それを受け入れてこそ、再発防止に繋がり、教訓として活かすことが出来るのでは無いでしょうか。

「歴史教科書を作る会」の教科書が全て真実を語っているわけでは無い以上、受け入れることはあってはならないし、そうでない教科書についても果たしてどうなのか何とも言えないところはありますが、真実は一つしかないと言うところもあれば、真実に近い教科書を各学校や教育委員会毎に自由に採用すれば良いと思います。

かつての戦争に関して言うのであれば、当事国である近隣諸国との間で、ドイツを見習って歴史教科書検定条約というものを締結し、お互いに真実というものを子供達に伝えて行くことができれば、それで良いと思うし、ドイツに出来て日本に出来ないことは無いし、本来なら出来て当然の事では
無いかとも思えるのですが。

例えば、韓国との関係について言えば、日韓併合以外にも、あの豊臣秀吉による朝鮮出兵なんてことも、微妙に影響していることもあるかも知れませんね。
これも本来なら、やってはならないことでもあったし、日本の歴史から言えば、天下統一するところまでは評価に値するところはあるものの、天下統一した後では余り評価出来ないところもあることを考えれば、朝鮮出兵と言う出来事についても、例えば韓国側の歴史ドラマもあれば、是非とも見たいし、日本の大河ドラマ等と比較しながら見るだけでも、大いに学べるかと思うのですが。
北朝鮮と韓国の関係についても、高句麗と新羅、百済の時代の歴史的背景を学ぶことによって、大いに参考に出来るところもあるし、中国との関係についても、そこから大いに学ぶことも出来るのでは無いでしょうか。

そうすることで、日本の将来を考えるに当たり、「例えば日本と敵対する外国人の立場となって、日本を攻撃するとしたらどうするか」と言う逆転の発想から、「日本は二度と戦争を起こしたり、巻きもまれたりすることを回避するにはどうすべきかと言うことや、日本が国際社会と敵対しないためには、どうすべきか」と言うことまで考えることが出来て、地球環境や世界的な紛争や戦争を回避し、核兵器廃絶するにはどうすべきか、という究極の発想までを考え付き、それを国際社会に発信して行くことまで出来れば、これに越したことは無いのでは無いでしょうか。


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