「A級戦犯 犯罪人でない」 野田氏「考えは不変」
政治の世界は、すっかり政局モードというか、民主党の次期代表と大連立に関心が集まっている。でもまあ、なんというか、日本の保守政治のあり方そのものが実はゆきずまっているというのがよくわかったりもする。
「A級戦犯 犯罪人でない」 野田氏「考えは不変」(東京新聞)菅直人首相の後継を選ぶ民主党代表選に出馬する意向を固めている野田佳彦財務相は十五日の記者会見で、野党時代の二〇〇五年、内閣に提出した「戦犯と靖国神社参拝」に関する質問主意書で「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」との考えを示していたことについて「考え方は基本的に変わりない」と述べた。
主意書は、当時の小泉純一郎首相がA級戦犯を「戦争犯罪人である」と指摘したのに対し「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」と指摘。理由として、極東軍事裁判の有罪判決後、国会決議や関係国の対応によって「A、B、C級すべての名誉は法的に回復されている」と説明した。……
日本は、東京裁判の判決を受諾して、国際社会に復帰した。ところが、国内では、国際社会に復帰し、「独立」を達成した直後から、国内的には恩給対象とするためのさまざまな措置がとられ(犯罪者は恩給の対象にならなかったため)、そのため、「実質的な名誉が回復された」という議論が生じることになった。それが完成するのが、記事にもある小泉内閣の答弁書であるわけだけれども。
だけど、これは「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の判決を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする」という、サンフランシスコ条約からいっても成り立たない議論。つまり国際社会向けの言葉と、国内向けの言葉を一貫して使い分けてきたというのが、日本の戦後社会でのあるのだろう。実際に、この問題での国際社会の眼はきびしい。アジアから、この野田さんの態度に批判が出ているけれども、これは欧米相手にも通用しないのだと思う。最近もアメリカの研究者による『バターン死の行進』の詳しい研究書の邦訳が出ているほどの受けとめのされかたをしているのだから。
だけど、一方で、日本の保守政治というものが、いわゆる「靖国」派を内包し、むしろそこから保守政治の担い手を形成してきた経緯をもっていて、ある程度以上の「靖国」的な考え方が根強く存在している。もちろん国際社会にはうけとめられないわけだから、あまり公然と主張することは少なくなっているのだろうけれども(実際に、野田さんも大臣になってからは靖国に公式参拝しているわけではない)。だけど、自民党の中心的な人たちとも共有する考え方でもあるだけに、簡単には撤回はできないだろうし。ここには、根本的な矛盾が存在していることも事実。これは、保守政治にとって、乗り越えることのかなり困難な矛盾でもあるように思うなあ。
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» 軽すぎないかこの御輿:野田佳彦 [飯大蔵の言いたい事]
増税は前から言っていたが、最近大連立で話題をつくっている野田佳彦。今回のものは話題としては重い。「サンフランシスコ講和条約や国会決議などによって、すべての戦犯の名誉は法的に回復されている。『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではないNHKニュースこれは国会議員として出した質問主意書の一部だそうだ。それはこの主意書だ。平成十七年十月十七日提出
質問第二一号
「戦犯」に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問主意書提出者 野田佳彦 上記に該当する部分はこうなっている。極東...... [続きを読む]
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全く以って、靖国神社で奉られている英霊の皆様のことを何だと思っているのか、と言いたいところですね。
そもそも、小泉純一郎首相がA級戦犯を「戦争犯罪人である」とするならば、公式参拝は絶対にしてはならないし、公式参拝をすることによって、近隣諸国から顰蹙を買うのは当然のことでは無いでしょうか。
逆に、「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」と言うのであれば、公式参拝そのものは別に問題無いし、少なくとも近隣諸国から顰蹙を買うことは無いのかも知れません。
しかしながら、果たして国際社会の中では、こんなものは通用することは無いと考えるべきでは無いでしょうか。
「A級戦犯は戦争犯罪人では無い」と言うこと自体は、必ずしも間違っているとは言えないのかも知れません。
仮にそうであれば、再審請求というものをすれば無罪となった方々も数多くおられたのかも知れませんが、何故やらなかったのか、あるいはやろうとしなかったのか、良く分かりませんが。
もしかすると、A級戦犯をはじめBC級戦犯も含めて、以下のような理由によるものに分類できるのでは無いのでは無いでしょうか。
①責任を自覚し、裁きを受けた人達
②本来であれば責任は無いものの、自ら責任を取って裁きを受けた人達
③本来であれば責任は無いものの、誰かを庇ったか何らかの事情により、責任を取らされて
裁きを受けた人達
④冤罪等により裁きを受けさせられた人達
再審請求をした場合には、少なくとも上述①を除いて無罪判決になると思われ、戦争犯罪人と
しての名誉回復して慰霊顕彰を受けても問題無いし、天皇陛下をはじめ首相や閣僚の公式参拝
しても何ら問題無いことに間違いは無いと存じます。
しかしながら、最も赦せないのは、本来であれば責任があるにも関わらず、責任を逃れ生き残った人達であり、こういう人達こそ、靖国神社への公式参拝を求める資格など何処にも無いばかりか、
それによって国際社会から顰蹙を買い、日本国全体が白い目で見られることになっては、いい迷惑
な存在では無いでしょうか。
これこそ、何処のお国の方なのか分からない人でしか無いのかも知れませんが、責めて贖罪の
意識があるのなら、幾らでも大泣きしてでも、靖国神社へただ参拝に行って貰えばそれで良い
だけのことでは無いでしょうか。
ただ、一番報われないのは、ただ「お国のため、天皇陛下のため」と信じ込まされ戦場に駆り出され、自ら犠牲となり、靖国神社で慰霊顕彰するべき英霊達なのでは無いでしょうか。
それと、空襲や原爆をはじめ、近隣諸国等で戦争の犠牲となられた軍人を除く全ての人達なのでは無いでしょうか。
それこそ、下手に公式参拝なんかすれば、「ふざけるな、この馬鹿野郎」と言うもの凄い怒りを私達
にぶつけられても致し方ありませんね。
中には、「この日本軍の馬鹿野郎」とか、「天皇陛下の馬鹿野郎」と言う、もの凄い怒りをぶつけて
こられても当然のことであり、私達日本人であれば、幾らでも、真摯に受け止めてあげなくてはなり
ませんよね。
このことを考えれば、私達一般の日本人としては、如何なる事情があろうとも戦争そのものは絶対にするべきでは無いことを深く反省し、かつての亡国の歴史を永遠に忘れることが無い様に大切に慰霊顕彰してあげれば、それで良いのでは無いでしょうか。
靖国神社については、自ら国際社会からも、天皇陛下や国家とも一切切り離して、そっと静かに
ご衰退することになっても、大切に慰霊顕彰してあげることで、お互いに痛みを分かち合いながら
存続することが出来れば何よりのことであり、それを見た近隣諸国の皆様に取りましては複雑な
感情を抱きながらも、そっと静かに通り過ぎて行かれるのであれば、もうそれだけで十分なことで
は無いかと、つくづく感じます。
投稿: asa | 2011/08/18 11:17