漏れ出した放射能を封じ込めることには、そう簡単には成功するはずがないわけだけれども、東電も政府も、事態に深刻さにたいしては、今なお、楽観的すぎるというか、事態を直視できずにいろとしか思えない。
過去最高10シーベルトを計測 福島第一の配管外側(朝日新聞)
東京電力は1日、福島第一原子力発電所1号機と2号機の原子炉建屋の間にある主排気筒付近で、毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)以上の放射線を観測したと発表した。事故後に測定された放射線では過去最高値。放射線を出している物質は不明で、東電は今後調査する。発電所周辺のモニタリングポストの計測値に上昇は見られず、環境中への放射性物質の漏れは確認されていないという。
東電によると、毎時10シーベルト以上が測定されたのは主排気筒の根元付近。原子炉格納容器の圧力を下げるためのベント(排気)の際に気体が通る「非常用ガス処理系」の配管が主排気筒につながるところで測定された。…
第一、燃料も、炉心も、格納容器も、実際にはどうなっているかもわからないのに、「順調だ」「放射能は低くなっている」などの判断をするほうが、どうにかしている。いまだ、重大な事態がおこる危険性はすてきれないし、封じ込めには、長い道のりが必要だ。全体してのエネルギー政策への判断と、この現在の事態への認識とは表裏一体の関係にあると言ってもいいかもしれない。こういう事態を前に、いまだ、簡単に原発の再稼働をすすめようなどという議論は、普通は考えられないのだから。
そして、こういう深刻な事態を前に、困難を押しつけられるのは、住民とともに、そこで働く労働者だ。この間も、被災以後、現場をになっていた労働者のかなりの部分が、必要な健診をうけていないことが明らかにされている。そのことを二の次にして、住民の安全の議論が成り立つのだろうか? そもそも、当初から、「下請け社長は『死んでもいい人を』と発注受けた」みたいな話があったことを週刊ポストが報じている。
数日前、毎日新聞が、現場で働く人たちについてのルポを掲載していた。
検証・大震災:福島第1原発事故、収束作業 覚悟の苦闘、黙々と続く(毎日新聞)
かつてない事故の収束に向け苦闘が続く東京電力福島第1原発。労働現場で何が起き、作業員は日々どんな思いで臨んでいるのか。
◆3・12~15 連続爆発◇俺たちに、ここで死ねっていうことか
大地震発生翌日の3月12日午前3時過ぎ。「圧力上昇を続ける1号機の原子炉格納容器から、放射性物質を含んだ水蒸気を放出する」と政府は発表した。50代の東電男性社員はそのことを伝える非常用ラジオのニュースに聴き入った。構内には屋内退避の指示が出されていた。
「屋内にいるだけで大丈夫なのか。放射線を浴びるとこのまま隔離されるんじゃないか」。一刻も早く逃げたかった。
菅直人首相が視察のため作業拠点の「免震重要棟」に現れたのは、その日の朝。原発の「頭脳」に当たる中央制御室にいた若手社員(21)は、同僚たちが首相に「何やってんだ。何とかしろ」と怒鳴り散らされたと聞いた。「俺たちに、ここで死ねっていうことか」…
◆3・14~15 放射線量上限「超緊急」引き上げ◇労働者は使い捨ての機械ではない
◆3・15~ 注水・外部電源引き込み◇ターミネーターの世界だ
◆3・20~22 電源復旧◇家族の写真さえ持ち込めない
◆3・24 3人被ばく◇彼らは普段、あんな仕事はしてない
◆4・9 経産相、視察は40分◇乾パン、食べてみろ
◆4・17 最初の工程表発表◇終わらなかったら? それでも排水する
◆5・14 60歳作業員急死◇夏は続出するんじゃ…?
◆5・17 7・19 新工程表◇あれだけ装置あればどれかは働くだろう
うーん。もっと、何がおこっているのか。それは、どんな問題なのかについて、正面から考えないといけない。まさに日本の縮図でもあろう。
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