私たちはこうして「原発大国」を選んだ 増補版「核」論
福島の原発事故が起こるはるか前に書かれた本である。もちろん、あの原発事故を目の当たりにしたいまから見れば、ちょっとなあ、なのだけれども。だけど、50年代の正力や中曽根、柴田の役割、70年代の田中、中曽根と電源三法をとりまく状況、そしてJCOの事故など、戦後の日本の原発史を考えたとき、よくできた本だと、ボクは思っているのだけれども。
清水の変節や高木の限界なども、ストレートで、それでいて興味深い。だけど、そこに8~90年代の動きを代表させてしまっているところが、この本の限界か。チェルノブイリのあと、ここまで肥大化させてしまった「安全神話」への言及も、なぜかちょっとだけ。そのことが、今度の原発事故への、立ち位置を危うくさせているのかなあとも思う。たんなる中途半端とは言いたくないけれども。
だけど、戦後の原発にかかわる本を読んでいると、どうしてもでてくるのが原水爆禁止運動とのかかわり。ここでの記述は、この本もかなり乱暴で、不正確だ。ここまで、不正確な本がならぶと、やはり考えてしまうなあ。それは、いろいろな条件や意図があったとしても、ある側面が異常に肥大に歪曲して、多数に認識されているという事実。それは、認識の歴史的過程なのだろうか。だとすれば、それは間違っているというのが大事なのではなく、認識をただすような、事実の提供が大事なのかなあとは思う。
そして、そのこととの関連で、あらためて思うのは、ソ連というなくなった国とその指導者の日本での犯罪的な謀略的行動とその影響力の大きさでもあるのだけれどもね。
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