時代が締め出すこころ―― 精神科外来から見えること ――
友人から紹介されて、精神科医の青木省三さんの本を読んでみた。
精神科医になって30余年,その短い間にでさえ,時代は変化した.一人ひとりにかかる圧力は強く,一人ひとりを護るものは少ない,人が孤立し孤独になりやすい時代になってきたと感じる.今の時代に追いつめられている多くの人がいる.しかも追いつめられた時,こころの病気や障害という形となって現れやすいのが,現代という時代の特徴ではないかと思う.これほど,こころの病気や障害が社会の大きな関心となった時代はこれまでにない.本書は,私が診察室で出会った人たち,広汎性発達障害,うつ病などの病気や障害を持つ人たちとの交流を通して考えたことを記した.今,何が起こっているのか,これから,私たちは何をしていくべきかを,問うものである.(本文より)
著者の関心は、社会が大きく変容しているもとで表れる病気が障害という点にある。なるほど、かつてはそれほど、問題とされなかった広汎性発達障害は、地域社会の変容や職場の変化のなかで、クルーズアップされる。病気や障害というものをこういう社会的な視点でとらえようという姿勢は読んでいて共感できる。同時に、目の前の患者に寄り添うこともわすれない。
こういう精神科医の提起を、どう受けとめるか。病気や障害がある人の困難は、ボクらから見ればより複合的でもある。やはり、経済格差やそれに重なるような形で、家庭の困難がつきまとう。そういうときに、どう複合的なひろい視野をもちながら、その人に寄り添うことができるのかということなのかなあ。
パーソナル・サポートというものがとても必要になっている時代だと思う。しかし、そのサポートはあくまでもソーシャルなものでなければいけない。そんな議論をしたことがある。いまの目前にある困難や生きづらさを考えるときに、ふと、そんな議論を思い出した。新しい社会的な繋がりを紡ぎ出す取り組みということか。
だけど、読みながら、ボクも発達障害だなあなどと言われているようで…。
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