昔 父は日本人を殺した ~ピュリツァー賞作家が見た沖縄戦~
昨日のNスペを録画で見た。参ったなあ。
近現代史の戦争の中で、もっとも凄惨な戦いとされる沖縄戦。日本側の死者は18万人以上、米軍側の死者も1万人を超える。
ピュリツァー賞作家、デール・マハリッジは海兵隊員だった父が死ぬ直前、「自分は太平洋戦争末期、沖縄戦に加わり、多くの日本人を殺した」と告白を受ける。デールの父は、戦場から持ち帰った多くの遺品を遺族に返してほしいと言い残し、息を引き取った。父は生前、デールに一度も笑顔を見せず、絶えず何かに怯え続けていた。父をあれほど、苦しめたものは何だったのか、デールは父と同じ部隊の生き残りを探し、全米を訪ね歩いた。その結果、父の所属した部隊は沖縄戦で240人中31人を除いて、みな戦死したこと、生き残った人たちも多くがPTSDに苦しみ続けたことを知る。今年4月、デールは父の託した遺品を持って、初めて沖縄の地を踏んだ。それは、デールが全米で集めた貴重な証言や資料と、日本側の証言を付き合わせ、これまでベールに包まれてきた沖縄戦の実像を浮かび上がらせる旅でもあった。
番組では、アメリカと沖縄のデールの旅に密着しながら、沖縄戦の過酷な現実をアメリカ人ジャーナリストの目線から、浮き彫りにする。
いま、日本では、兵士から見た戦争の記憶を残すという取り組みがなされているが、そのアメリカ版、米兵の見た沖縄戦の記憶の物語だ。その生々しさには息を飲むし、その兵士たちの背負った傷の大きさはやはりものすごかった。
もちろん、番組では、沖縄戦にいたる経過は、捨象されている。沖縄戦の経過には、日本でそれを担ったのが中国帰還兵であり、アメリカ側の、沖縄戦への意図というのもある。そういう歴史的な経緯のなかで、沖縄戦を位置づけることが大事なんだろうけれども。
あまりにも酷すぎる沖縄戦。その惨さはアメリカにとって、大きなものだっただけに、そこに向き合わずに、戦後の沖縄占領があるとすれば、いまの沖縄の現実もよく理解できるのかもしれないと思ったりする。だけど、番組で、アメリカのジャーナリストがアメリカはこの戦争から学ばなかったということを言っていたけれど、では、日本はどうなのだろうか。沖縄の問題を含め、日本のいまは、やっぱりここにあるのかもしれない。そういうことも考えさせられるのだけれども。
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