障害者基本法:改正案を修正、衆院委可決
ほんとうに人間の尊厳を大事にする政治に向かっていくのかが問われている。
障害者基本法:改正案を修正、衆院委可決(毎日新聞)障害者と健常者の共生を目指す障害者基本法改正案が15日、民主、自民、公明各党による修正を加え、衆院内閣委員会で、全会一致で可決された。東日本大震災を受け、国と自治体に障害者の生活実態に応じた対策を義務づけるなどの防災・防犯対策を新たに盛り込んだ。週内にも衆院を通過する見通し。
震災で車椅子利用の身体障害者が逃げ遅れたり聴覚障害者が防災無線を聞き漏らすなどしたため、障害者団体側が規定を盛り込むことを求めていた。修正案は、このほか、障害者の定義に「発達障害」も明記した。
障害者権利条約の国内法整備の一環としてとりくまれる。だからこそ、改正法案は障害者の基本的人権を明記し、「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」の実現を掲げている。障害のとらえ方にも発展がある。障害者の社会参加を阻む社会的障壁によって障害がうみ出されるとした。社会的障壁の除去にあたって「必要かつ合理的な配慮がなされなければならない」との規定をもうけた。
しかし、当事者の議論が十分に反映されたとは言えない。「可能な限り」という限定がつけられたり、肝心の「合理的配慮」の定義もあいまいだ。「障害者」の中に難病患者など支援を必要とするすべての人たちがふくまれることも明記はされていない。
法案の不十分さに、障害者たちが抗議をし、審議で修正するとしていた。しかし、修正派、民主、自民、公明の取引ですすめられ、スピード審議で押し通そうとしている。
もちろん、改正そのものには前進面もあるのだから、それは評価はできるのだけれど、本当に、権利保障にふさわしい実効性を発揮するのかが問われることになる。それは、いまの震災の現実が問いかけている。
東日本大震災:知的障害者、相次ぐ急死 避難先で発作など 苦痛、伝えにくく(毎日新聞)東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で避難した高齢者らが慣れない避難先で死亡する「災害関連死」が問題化する中、原発周辺の入所施設から避難した知的障害者の死亡が相次いでいる。毎日新聞の調べでは少なくとも11~67歳の男女4人が死亡し、中には津波で夫が行方不明となった妻が知的障害者の長男を災害関連死で失うケースもあった。専門家は「知的障害者は苦痛を伝えにくい上、多くは持病などを抱え、長時間の移動や環境の変化が致命的影響を与える場合もある」と警鐘を鳴らす。
原発から約5キロの福島県富岡町の知的障害児施設「東洋学園」に入所していた小野卓司さん(当時23歳)は震災翌日の3月12日、入所者ら計約200人と同県川内村の系列施設へ避難し、避難指示範囲の拡大に伴い夜に村内の小学校へ移動。周辺住民と一緒の慣れない環境からか落ち着かない入所者が相次ぎ、13日に同県田村市の通所施設(定員40人)に移った。28日夜、持病のてんかんの発作が起き、服薬で収まったが、間もなくあおむけのまま動かなくなり、29日正午過ぎ、救急搬送先で死亡。逆流した食物でのどを詰まらせたとみられる。
「本当に(頭の中が)真っ白になりました。3週間で2人が……」。同県新地町に住む母みね子さん(55)は嘆く。漁師の夫常吉さん(56)も震災当日に海へ漁船を見に行ったまま戻ってこない。
卓司さんは幼いころ呼びかけても振り向かなかった。障害が判明した時、夫婦は「一緒に育てよう」と励まし合ったが、卓司さんは外に飛び出しては家に戻れなくなった。小学校に上がる時、東洋学園に入所。障害は重く、成人後も着替えや入浴に介助が必要だったが、みね子さんは学園行事に必ず出かけ、盆や正月の帰省時は常吉さんが車で連れ出した。車中や母の手料理の並ぶ食卓で卓司さんはいつも笑顔だった。
「ずっと続くと思っていた」日々は震災で一変した。「でも、私は2人に守られた気がするんです」とみね子さん。多くの家が津波で流された中、自宅は無事だった。今、卓司さんと一緒に施設にいたやはり障害者の次男(22)が気がかりだ。「いつもお兄ちゃんが近くにいた。今あの子はぽつんとしているのじゃないかと」
東洋学園では他に千葉県鴨川市の青年の家に集団で再避難した20日後の4月27日、小学6年の久保田菜々さん(当時11歳)が授業中に施設前の海でおぼれて死亡している。…
被災地の障害者たちは、いまだ孤立のもとにある人も少なくはない。命と安全そのものがいま脅かされている。しかし、「厚生労働省は障害者施設利用者の災害関連死を『把握していない』としている」。そのことが、まもなく成立するであろう改正基本法のもとで問われている。
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