子どもと教育実践のための教育学を求めて
午後からは、教科研の表題のシンポジウムに参加。ものすごく難しい議論で、いやあ疲れたなあ。
まずは敬愛する山崎隆夫先生の、「いくつかの転機で、私が寄り立った教育論を語る」。これは自身の子どもたちと向き合った実践をふり返りながら、そこで依拠した教育学をふり返るという趣向。続いて、やさぐれ飲み仲間の佐藤広美さんの「子どもと教師を信頼する教育学 ― 戦後教育学批判のなかで考える」。これは、震災のくだりはちょっと余計(ごめんなさい)だけど、この間の、広田、佐藤学、矢野などの戦後教育学批判に対して、あらためて勝田教育学の意味を考えようという、正面からの発題。 なかなか、消化しきれません。
内容は『教育』で再録されるんだろうから、そちらにまかすけれども、考えたことはいくつかある。
いちばん、消化不良で残ってしまうのは、いまの問題。90年代以降の子どもの変化、もっと言えば、社会の変容にたいして、教育学はどんな役割を果たしているのかということに対する答え。これは本質的には、現代の教育そのものへの不信にどう答えるのかということなのだろうけれども。その中身が、なかなか深まらない。現場の教師たちの葛藤や、誤解お恐れずいえば「教育」離れとも言えるような状況のなかで、なにをどう議論するのか?
そもそも、教育とは、教師や大人と子どもとの間の、子どもの成長や発達にかかわる、きわめて文化的人間的ないとなみの総体ということもできる。ならば、教育学は、総合的な人間学という性格をもつ。教育学の核心を、坂元忠芳さんは「子どもに情勢をみる」という表現をしたけれども、子どもは子どもそのものだと思う。そこにある社会の構造やありようというものを問いかけるのは、社会科学としての教育学そのものではないのかとも思う。教育学がどれだけ、社会的な視野をひろげた総合科学として成り立っているかどうかが問われているのかとも思ってしまうけど、どうなのかなあ。議論のなかでは、子どもの貧困の問題を含め、ここが語られない。
戦後教育学を批判する、ポストモダンの潮流は、新しい認識を方法的にもつこむという性格があると思う。それは、これまでの方法では認識できなかったものへの接近という面もある。そう言う意味では、その批判には正当性がある面は存在する。言い換えれば、その批判をうけとめて、より真理に接近できる方法と認識が求められているのかもしれないといつも思うなあ。現実に近い認識を持つ込んでいるという自覚が必要なのではないのかとも思うけどなあ。
だけど、これはシンポのあとに、ある人と、しゃべって学ばされたことでもあるけれども、戦後の教育学は、他の学問領域以上に、人間の営みやその基礎にある人権ということにたいして豊かな思想的な営みをつくりあげてきたことも否定できない成果でもある。それに対し、学問の世界そのものは、教育学部という場で、そうした教育学そのものがまともに議論されなくなっているということも大きな事実だ。
現実の苛酷さに接近しようとする模索と、そういうこれまでの営みの継承ということのあいだの狭間に、教育学や教科研というものがある。現場は、新自由主義がいまだに跋扈し、驚くような権威主義が跋扈する危機のもとになる。子どもたちは社会の変容のもとで、明日を生きる実感をもてずにいる。ここでボクらはどうすればいいのか。
ボクみたいな不勉強の人間は、悶々とする。悶々を突破するには、ほんとうに命がけの勉強が必要かもしれない。だけど、日々の現実は、自分の無力さを感じ、飲まなければやってられるかあって世界でもある。いやはや、結構、こうした現実は、本質的に、ボクらのこれからの生き方そのものを問いかけている大きな問題でもあるようだなあと考えさせられる。飲んべの佐藤さん。さあ、お互い、どうしましょうかね。
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