心の傷を癒すということ―神戸……365日
阪神大震災を経験した友だちから紹介されて、読んだ本。神戸大学に勤務していた著者が、震災の現地で、医療の現場から書き残したリポートである。いったい、大震災は、どのような心の傷をもたらしたのか、精神科医はどのような行動をとったのか、そして人々はそこからどのように立ち直っていったのかを記している。とても、おもしろかった。
先日、精神科医が災害について書いた本で『災害救援』という本を紹介した。著者は現状に批判的なスタンスの野田正彰さんだ。こんど読んだ本の著者は安さん。著作の大部分は、「産経新聞」に連載されたものだというから。政治的なスタンスも、そして、精神科医としてのありようも大分違ったのだろうと思う(過去形にしたのは。安先生は。すでに他界されている)。だけで、ほとんど、体験を通じて、災害のなかでの心の問題をどうとらえるかの結論は同じのようにも思えた。問題は。もっとも心に痛手を負った、親しい人を亡くしたり、家や生活そのものを失った人の哀しみにどう社会がよりそうかということと。
野田さんの著書にある救援文化ということを考えさせられた。たとえば、海外から日本によせられるメッセージの多くは、「われわれはあなたたちとともにある」というものだ。だけど、日本で語られるのも「がんばろう日本」だ。その善意は否定はしないが、被災者が哀しみや苦しみに耐え、十分にがんばっている。むしろ被災者に必要なのは、もっと哀しみや苦しみを表出することなのかもしれない。そう考えるとここには日本の救援文化の貧困があらわれているのかもしれないと、ちょっと考え込んだ。
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