米軍基地の現場から
在日米軍基地を抱える3県の地方紙=沖縄タイムス・長崎新聞・神奈川新聞社が連携し、昨年1月から6月まで80回にわたって執筆した連載を加筆修正し、再構成したのが本書。地方紙ならではの意欲作が、さらに地方紙の連携という形でヴァージョンアップしたわけだ。それだけでも、この問題の大手メディアのあり方をするどく告発するものとなっている。
まず、在日米軍基地のいまのリポートから始まる。いまだ広大な米軍基地が軍事優先で我が物顔で存在するこの3県。しかし、基地との向き合い方はそれぞれにちがいがある。続いて、基地経済がもたらすものをスケッチする。そこでうかびあがるのは、基地ある限り、自立できないもどかしさでもある。さらに、基地あるがゆえにくり返される米兵犯罪などの基地被害、ここには地位協定と密約の壁がたちはだかる。
ではなぜ、この基地は固定化されるのか。本書では、90年代の核疑惑で揺れた日米同盟が、日米の軍事一体化の方向で強化されていく過程を追っている。普天間問題のはじまり、安保再定義から新ガイドライン、周辺事態法、テロ特措法へと続いていく。そこにあったのはなし崩しの軍事強化だ。そして自衛隊そのものが日米軍事一体化のもとで変貌を遂げていく。
なるほど、沖縄問題は沖縄の問題では決してない。そのことも本書は問いかけている。同時にいろいろ考える。なぜ、安保や外交で日本は思考停止になってしまったのか。なるほど、90年代後半以降の基地や安保の変貌はおどろくほうだ。それが、まちがいなく矛盾の拡大している。同時に、本書では語られていない前史がそこにあり、この変貌もその帰結なのだと思う。その前史にも注目したい気がした。
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