日本人はなぜ戦争へと向かったのか 第3回 "熱狂”はこうして作られた
今夜のNHKスペシャル。
「坂の上の雲」の時代に世界の表舞台に躍り出た日本が、なぜわずかの間に世界の趨勢から脱落し、太平洋戦争への道を進むようになるのか。開戦70年の年に問いかける大型シリーズの第3回。
日本が戦争へと突き進む中で、新聞やラジオはどのような役割を果たしたのか。新聞記者やメディア対策にあたった軍幹部が戦後、開戦に至る時代を振り返った大量の肉声テープが残されていた。そこには、世界大恐慌で部数を減らした新聞が満州事変で拡販競争に転じた実態、次第に紙面を軍の主張に沿うように合わせていく社内の空気、紙面やラジオに影響されてナショナリズムに熱狂していく庶民、そして庶民の支持を得ようと自らの言動を縛られていく政府・軍の幹部たちの様子が赤裸々に語られていた。
時には政府や軍以上に対外強硬論に染まり、戦争への道を進む主役の一つとなった日本を覆った“空気”の正体とは何だったのだろうか。日本人はなぜ戦争へと向かったのか、の大きな要素と言われてきたメディアと庶民の知られざる側面を、新たな研究と新資料に基づいて探っていく。
確かに、貴重な新資料で構成する。戦争が進行していく過程で、メディアがはたした役割というのはよくわかる。自分の主張に、とらわれて雪だるまが雪の坂を谷に落ちていくように。その様はよくわかるし、その点は評価したい貴重な番組なのだけど。
だけど、契機は、「満州事変」の際の、緒方と陸軍との会談なのか? 軍とメディアという範囲で問題を追うだけで、この時代の構造のなかでのメディアの位置が見えるのかなあ。このシリーズは軍の比重が高すぎるような気がする。すでに、メディアはこの時点では、かなり権力に取り込まれてはいなかったのか。「満州事変」は、その結果ではないのか。判断を回避する政治、判断のできない軍、その軍を補完するメディア。そういう図式では、下手をすると敵なし論になりかねないなあ。ここにいたる過程も視野にいれて考えてほしいとも思うのだけどねえ。
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