戦争依存症国家アメリカと日本
海兵隊のグアム移転にかかわる議論をリードしていた吉田健正さんの新著。日本で紹介されないアメリカでの軍事費をめぐる議論を紹介するのが、本書だ。
この間、アメリカでは軍事費の削減を求める議論が活発だ。その内容をかなり丁寧に紹介する。それは、当たり前に、これだけ貧困と格差が広がる一方で、莫大な、きわめて莫大な予算が軍事費につぎ込まれる。その声は、政府の中枢部にまでおよぶが、軍産共同体とかつてよばれたようなアメリカのありようなそれを阻んでいる。なぜ、軍事費の削減の声が広がるのか、本書では、軍事超大国アメリカの実態もていねいに紹介する。どれだけの規模の軍事費がどのように支出されているのか、そのもとで、アメリカ軍はどのように近代化しているのか。軍事費削減の声をオバマも裏切り、変えることはできていない。
この本の、いちばん面白いのは、日本の大メディアが、軍事超大国を推進するアメリカ政府の代弁者となっている。結局、日本の大メディアが報じるのは、ジャパンハンドと呼ばれるような「安保で飯を食う人々」の発言ばかりがたれながされている。
後半では、沖縄の基地のなりたちや、米軍再編の経緯から、「抑止力」論の虚構を明らかにする。
沖縄の基地問題の大きな背景には、戦争に依存するアメリカのあり方、独善派遣国家としてのアメリカの姿があると著者は言う。そのアメリカに付き従う日米同盟そのものが問われている、これが著者の訴えでもある。
« 土佐のまつりごとから―青年の就活「酷書」 実態を聞き取り | トップページ | 政府、周辺事態法改正へ 公海へ補給支援拡大 »
「平和」カテゴリの記事
- 全米各地でトランプ氏に抗議デモ 「王はいらない」大合唱(2025.06.15)
- 那覇市議、疎開記述に誤りがあると持論 対馬丸記念館の展示に 館長「間違っていない」(2025.06.12)
- 前衛7月号ができています。(2025.06.09)
- 「取り残された遺骨 〜長生炭鉱 返還を目指す市民の活動〜」(2025.06.08)
- 「『慰安婦』問題と日本社会」(2025.06.07)
「読書」カテゴリの記事
- 社会の底が抜けたような状況に、論壇誌は(2025.06.10)
- 劣化する米国、吉見俊哉さんの見方 非対称な関係、見直す時 トランプ氏再選、背景に帝国主義(2025.06.02)
- 6月号ができています(2025.05.11)
- 沖縄県民の戦場動員は行政にも責任 関東学院大名誉教授の林博史さん 4月17日発刊の新著で網羅的に解説(2025.04.17)
- 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2025.03.11)
「政治」カテゴリの記事
- 全米各地でトランプ氏に抗議デモ 「王はいらない」大合唱(2025.06.15)
- 【ジェンダーギャップ指数】日本、2025年は世界118位で前年と同じ 政治分野は後退(2025.06.13)
- 那覇市議、疎開記述に誤りがあると持論 対馬丸記念館の展示に 館長「間違っていない」(2025.06.12)
- 教員の働き方改革 「現場を無視した議論」 教育委員会が憤る理由(2025.06.11)
- 社会の底が抜けたような状況に、論壇誌は(2025.06.10)
「沖縄」カテゴリの記事
- 那覇市議、疎開記述に誤りがあると持論 対馬丸記念館の展示に 館長「間違っていない」(2025.06.12)
- 前衛7月号ができています。(2025.06.09)
- 平和教育「とても有意義」「良かった」が過去最高88・1% 基地への抵抗感はやや薄れ アンケート と 自民・西田議員の「ひめゆり」発言、生徒の8割が知らず 沖縄県立豊見城高 平和学習講師「戦後史を学ぼう」(2025.06.06)
- シリーズ 核の80年(1)核拡散 恐怖と不信の連鎖(2025.05.26)
- 沖縄・玉城デニー知事、県平和祈念資料館の内容変更を否定 参政党県連の「知事によって左右」発言を受け(2025.05.16)
« 土佐のまつりごとから―青年の就活「酷書」 実態を聞き取り | トップページ | 政府、周辺事態法改正へ 公海へ補給支援拡大 »
コメント