博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか?
昨日のシンポの感想の書き込みに、「じゃあ、どうするの」っていうつぶやきをいただいた。たしかに、ちょっと、抽象的で、漠然とした感想だったので、申し訳ないんだけどね。ただ、そう簡単に語り尽くせない問題でもあると思う。
一筋縄ではいかないという点では、この本がテーマにしている、ポスドク、高学歴ワーキングプアの問題もそうだ。サイエンス・コミュニケーションなどのとりくみで、この問題について発言していた榎木さんがまとめた1冊。ここに来て、年配の研究者の含め、学術界全体の共通認識になってきたと言えるけれども、この問題を社会化していく上で彼の活動がはたした役割はとても大きいと思う。
1章では、博士の現状、2章では、なぜ博士あまりの時代になったのかということが明らかにされる。これはとても、わかりやすく、説得的。3章からは、では博士を減らせばいいのかといえば、そうではなく、博士が社会的にはたすべき役割、博士を使いこなせない社会でいいのかという問題提起がなされる。社会自体が分厚く、豊かになっていくには、博士の役割が大きいというのはボクもそう思う。そのためには、社会と博士の関係が変わらなくてはいけない。
その方向性については、これがなかなか難しい。大きな方向性として博士の流動化を彼は主張する。一般論として、また、最終的なあり方として、そういうことは間違いではないとはボクも思う。だけど、それには、前提があるようにも思える。彼の議論は、ちょっと流動化にこだわりすぎ。あたりまえだけど、生活保障という問題がある。博士が、最先端の研究だけではなく、現実の社会のなかでしっかりした役割を果たせるような状況をつくっていくにも、もっと知恵が必要だ。榎木さんなりのイメージは示されているけれども、企業にしても、学校にしても、そして、社会のなかでそういう働きの場をつくってくうえでも、知恵が必要なのだ。社会的な合意の形成が前提となる。ここで、どのような知恵の出し方が、他の先進国などでは蓄積してきたのか。日本の社会のなかでは、企業にしても、公共的な部門にしても、それがなぜ弱いのか。そして、博士の養成もふくめ、高等教育はどう変わらなければいけないのか。この分野の専門的な人からの発言を含め、もっともっと議論をしていかなければいけない問題だと思うなあ。それが、なかなか進まない。ボクにはその点では、答えはそんなに簡単に発言できない。できること、発言できることを見つけながら、考え続けるしかないのだろうな。
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