人間失格?―「罪」を犯した少年と社会をつなぐ―
土井さんの本っておもしろいですよねえ。今度の本は、これまでも書いていた少年犯罪や若者のキャラなど人間関係の問題を、流行の社会学の理論、とくに孤立の問題にもとづいて議論したもの。犯罪を犯す若者を特別な存在として排除するようになった社会のあり方を問いかけている。
とくに若者論を論じた3章と、不寛容な社会、排除社会の矛盾を論じた6章とおもしろい。このように十二分におもしろい本だけど、そのうえで、いろいろ考えさせられるものもある。
いつも思うけれども、この手の社会学の議論は、発達などの視点を進歩史観として、否定、もしくは議論の外に置く。単純な発達論はよく考えなければいけないけれども、はやり、あらためて押さえておきたい問題も少なくはない。これをどう接合するのかは、いつも考え込む。
もう1つは、社会の問いかけ方。犯罪を個人の問題として、排除している社会のあり方を問う。そして連帯の必要性を強調する。それはそうだ。だけど、犯罪はやっぱり個人の問題だけではない。社会学者によっては認識論的誤謬などの言い方をする人があるが、やっぱり、いまなお社会の問題そのものが問われている。それと、個人の問題としてうけとめてしまう心性とは乖離があり、いまなお社会は見えない存在なおだけれど、それをどう考えるのかということ。なぜ、社会の問題が見えないのか、社会の問題について、認識を共有するにはどうすればいいのか。現在もなお、階級社会で、資本の本性はみごとに発揮されている。もちろん、それは、すべてが直接、若者の問題にかかわるわけではない。個人の個別の問題から出発する以外には方法はないのだろうとも思うのだけれども。
このあたりのことを考えたいなあなどとは、個人的な問題意識としてはとっても思うのだ。だけど、特定の人を排除する社会のありようへの指摘はとっても大事だと思う。
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