軍隊教育と国民教育 国陸海軍軍学校の研究
高野邦夫さんがライフワークの軍隊教育についてまとめた労作。戦前、野蛮な侵略戦争をくり返した日本の軍隊。軍隊についてはこの前にNHKスペシャルでもいろいろな取り上げられ方をされているけれども、軍隊は軍隊だけで成り立っていたわけではない。この軍隊のあり方を規定したのが、教育勅語と軍人勅諭による天皇制イデオロギーであり、それは独自の軍隊教育によって支えられてきた。ところが、この軍隊教育とはどういうものだったのかは、これまで十分に明らかにされてきたわけではなかった。本書は、軍隊教育史の第一人者として実証研究を積み重ねてきた著者の研究の集大成の一冊だ。
本書前半の第一部は、一般の読者でもわかる軍隊教育史の入門編として、どのように国民が兵士として戦争に動員されたのかが明らかにされている。第二部以降は、専門的にこの問題を学びたい読者に、陸軍・海軍それぞれの教育とはどういうものだったのかが、豊富な資料や文献の紹介などとあわせて明らかにされている。陸大などは、戦前の日本で言えば最高のエリートと言える。たぶん、帝大以上だったのだと思う。だけど、そこがどんなところだったのかは、ほとんどボクらは知ることはない。それを、資料をふんだんに使って、見せてくれる一冊なのだ。天皇制軍国主義とは何だったのか、それに国民を動員した教育のあり方と同時に、社会全体を大きく規定していたものが何なのか、明らかにしてくれる一冊なのだ。
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