永遠の0
昨日は、関西へ出張。トンボ返りだったので、帰宅は最終電車。さすがに疲れました。出張の内容は、おもしろかったですけど。
作者は、放送作家だよね。さしがにうまいなあ。これは、見事に泣かせます。さすがに、資料もよく読みこなされているし、どんな取材をしたのかお聞きしたいとまず思う。
そういう下支えがあるから、あの戦争の、兵士をもののように、扱って、死を強いたという1つの側面を見事にうきぼりにしている。さまざまな元兵士を登場させ、強いられた死へのその思いを語らせる。こういう本が、若い人たちの間で、ブームのように読まれている。捨てたもんじゃないなあと思うし、きっとそのことももつ意味や意義は少なくないなあと思う。たぶん、特攻を主題としてつくられた小説のなかでも、かなり良質の作品とも言えるのではないか。とても重いテーマを、できるだけ、歴史的な事実にもとづいて書こうという、作者の誠意は、やや説明的な語りの多様という形になってしまっているのだけれどもね。
ただ、読み終えて、少し冷静になって考えると、どうも物足りない感じもする。それはあたりまえで、例えば高木俊朗さんなどが残した、実際の兵士の語りなどのドキュメントにくらべようはない。そういうリアリティという点では、スーパーマンとも言える主人公が軸になっていて、一人一人の葛藤など、やはり迫力にかける。少し考えると、物語をつくるために、語られない世界も多いこともきずく。どのように兵士はつくられたか、兵士たちが経験した加害とは?
これから、そういう戦争や兵士たちの体験は、いよいよ最後の語りの時代から、伝承の時代に入ってくる。そういう時代の戦争の体験はどう語り継がれていくのだろうか。その体験をベースにつくられてきた、この国の平和意識を、ボクらは、まっとうに発展させることができるのか。
そういう営みのなかのこの小説を、どう位置づけていくのかということも、何かしら大事なことのように思う。
久しぶりに読んだ、考えさせられ、泣かされた1冊でもあった。
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