働くナビ:公立高校無償化で定時制の生徒の状況は?
新聞労連委員長の東海林さんの記事。
働くナビ:公立高校無償化で定時制の生徒の状況は?(毎日新聞)◆公立高校無償化で定時制の生徒の状況は?
◇不安定な雇用、厳しい両立 授業料以外の学費負担、年7万円
◇サービス業の非正規主体、使いにくい奨励金制度政権交代によって、公立高校の授業料無償化が実現した。働きながら学ぶ定時制高校でも、授業料は無償となった。失業率の高止まりなど雇用を巡る情勢が相変わらず厳しい中、働き、学ぶ環境は改善されたのか。
日本高等学校教職員組合(日高教)の定時、通信制部が7月30日から8月1日にかけて、愛知県犬山市で開いた「全国定通教育学習交流集会」には、全国から定時制高校の教諭や生徒、父母、OBら100人を超える参加者が集まり、定時制の現状や問題点を巡って活発な議論が展開された。
交流会では、1年生の段階でかかる費用の全国調査(19都道府県の141校。通信制、多部制含む)の結果が報告された。授業料無償化による負担軽減額は年間3万2400円。これに対し、授業料以外に学校生活にかかる費用は平均6万9951円だった。内訳は入学金(2492円)、PTA費(6704円)、生徒会費(4780円)、体操服や靴の代金(9822円)、実習費(8635円)などだ。これには、交通費や修学旅行の積立金などは含まれていない。授業料が無償になったとはいえ、学費として相当な負担がある実態が浮かぶ。
交流会に参加した関西の教諭は「定時制の生徒には、家庭が経済的な困難を抱えている者が多い。いろいろな負担に耐えられずに学校をやめる生徒も実際にいる」と話す。そうした生徒には、学費を自分で働いて賄っている生徒も多い。
生徒を苦しめているのは雇用状況の厳しさだ。埼玉県の朝霞高校に通う2年の男子生徒は、学費の滞納を繰り返している。男子生徒は、入学金だけを親に払ってもらい、後の学費は全部自分で支払うことを条件に定時制に進学した。
入学後すぐ、パン屋でアルバイトを始めたが、早朝の仕事で定時制との両立が難しかった。次の仕事は約5カ月間見つからず、面接は30回落ちた。ようやく採用されたラーメン店のアルバイトは、半月間働いたが、体調を崩して「1日仕事を休みたい」と言ったら解雇された。半月分のバイト代で滞納した学費を払ったが、また仕事探しをしなければならなかった。次のコンビニエンスストアの仕事が決まるまで、やはり5カ月かかった。
その間、学費は滞納し、学校からは「退学になるかもしれない」と言われた。男子生徒は「どんなに頑張っても、仕事が見つからなければ学費は払えない。中学はいじめもあったけど、今は学校も楽しいし、何とか勉強を続けたい。無償化はありがたいけれど、それだけで学校に行けるわけではない」と訴えた。
仕事をしながら夜間で学ぶ生徒には奨励金を支給する制度もあるが、多くの県では年間180日以上の就労が条件となる。日高教の調べでは、働いている生徒は昔なら安定した正社員の職もあったが、今では9割が非正規雇用で働いている。不安定で180日をクリアするのは容易ではなく、多くの生徒がこの制度を使えないでいる。…
埼玉県の教諭は、「生徒たちの仕事は主に、物販やファストフードなどサービス業の非正規。仕事はあるように見えるが、サービス業は定時制の授業の始まる夕方からが忙しく、働き口は多くはない」と言う。若者の足下の不安定は、ほんとうに、底のない穴が、たくさん開いた状態にある。
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