幻想の抑止力―沖縄に海兵隊はいらない
短い本です。
鳩山首相の辞任までつながった「抑止力」。マスコミでは日常用語のように使われるが、誰がその内実を正確に知っているのか。本書はまず、国際政治において、「抑止力」概念が生まれた経緯を分析する。そして、「抑え、止める」という言葉と裏腹に、戦争を生み出した過去の事例を検証する。次に、海兵隊の実態と歴史である。なぜ「殴り込み部隊」と言われるのか戦争でどんな役割を果たすのかを紹介する。その上で、沖縄に海兵隊をおくことが、「抑え、止める」のでなく、戦争を誘発しかねないことをたんねんに分析する。いま、日本とアジアの平和を考える格好の書。
沖縄には海兵隊はいらない。その立場で、いまの普天間問題の解決を提起する。こういう思いはボクも筆者と同じだ。そして、この抑止力という言葉自体、定義がはっきりしているわけではない。その問題についての、正面からの議論も求められていただけに、その問題に正面から挑んだ労作に敬意を表したい思いでいっぱい。筆者の思いに共感し、ボクもがんばらなければという思いになった。
そのことを前提に、やっぱり意見の微妙な違いもある(笑い)。筆者はある意味で、現実主義者。武力というものが実際に存在し、その武力があるの役割をはたしている現実がある。そしてその武力を少なくない人が承認している。そのことから議論が出発する。だから対抗的な方向も、憲法9条ではなく、国連憲章であったりする。ボクは、そのことが、議論の組み立てを窮屈にしているという印象をもつ。
だから、現実の沖縄の海兵隊の問題を論じるときも、アメリカの戦略をもっと論じてほしいし、中国の問題を論じるときも、現実の少なくない人の中国への懸念から出発して、中国の軍事の実体はあまりろんじられない。一言付け加えれば、海兵隊の評価もちょっとちがうかなあ(大づかみに論じているだけなので、いちゃもんをつける問題ではないけどね)。
でも、こういう議論をすすめるということが大事だし、この手の問題を本格的に議論する論考が、沖タイの屋良さんの本以外には、あまりないだけに、大事だと思う。刺激ももらったし、ほんとうに普天間基地の無条件撤去に向かって、本土の議論が活発になるうえでの契機にしてほしい本だと思う。
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» 2010年07月04日のつぶやき [大津留公彦のブログ2]
つぶやき [続きを読む]
» 城繁幸氏の「共産党という名の貧困ビジネス」について [大津留公彦のブログ2]
城繁幸氏のブログに
共産党という名の貧困ビジネス
という記事がある。
twiterで何度もretweetされてくるが中身があまりにひどいので取り上げることにした。
城氏の『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』という本を昔私はみんなに薦めていたので氏のこの文章を見て大変残念だ。
この記事はこんな感じで始まる。
... [続きを読む]
» 国会議員の定数削減についてのアンケートへの参加の訴え [大津留公彦のブログ2]
私は今度の選挙が節目となる可能性のある課題が二つあると思う
一つは消費税の増税
民主党菅総理は今日もすぐ上げる訳ではないと言い訳に回っているようだが民主党内部文書では来年3月までに結論を出し道税法案を通すとなっていると言う。
これは毎日のように書いているので今日は省略
二つは国会議員の定数削減
これについての今日のtwitterの書き込みから2つ
RT @dohc_ RT @sncomn: 東京新聞社説「衆院で定数を八〇削減しても六十億円弱程度の予算削減にとどまる。だとしたら、歳費などに加... [続きを読む]
» 世直しドクター危うし!(公務員削減問題とみんなの党批判) [大津留公彦のブログ2]
東京駅八重洲口でみんなの党の松田公太氏が演説していた。
仕事帰りにここで聞くのは2回目だ。
橋本内閣で消費税が2%上がった時に会社が倒産しかかったので今消費税をあげる事には反対だという。
日経によれば東京選挙区の五人目の議席を共産党の小池晃氏と争っているという。
マスコミの吹かせた強風がみんなの党に当たっているようだ。
このままでは小池晃氏は落選の憂き目に遭う可能性が高い。
小池晃氏が落選すると東京では消費税増税派ばかりとなる。
東京都民はそんな作られた風に抗い国会に対する消費税増税反対の確かな... [続きを読む]
» バナちゃん頑張れ! [大津留公彦のブログ2]
バナちゃん頑張れ!
大阪の我がバナちゃんは一般新聞で当選予想に入っていない。
しかしネット上では当選の可能性があるという意見が多い。
あるマスコミ筋の情報では3位にすべり込むまであと3%だという。
この3%がどれくらいなのかは分らないが今日の爆破発的な動きで逆転の可能性は十分あると思う。
この人に惚れる男は多い
こんなものから紹介しよう
共産党の清水ただしについて。
[続きを読む]
» 参議院選挙が終わった [大津留公彦のブログ2]
参議院選挙が終わった。
民主党が敗北し議席が大幅に減った。
消費税税率アップ発言が原因だったことは明らかだろう。
その批判票が小選挙区で自民党に移らざるを得なかったのは小選挙区制のなせる技だろう。
また事前の予想の通りみんなの党が民主も自民も嫌と言う層の受け皿となった。
又、護憲派の政党が後退した事は残念だ。
特に私も勝手連に参加した東京選挙区で世直しドクター小池晃氏を落選させた事は非常に残念だ。
高知のブログ仲間と勝手連を作り大阪の清水ただし氏の浮上も図れなかったのも残念だ。
民意は無理矢理... [続きを読む]
» いづこにも貧しき道がよこたはり神の遊びのごとく白梅(哀悼玉城徹さん) [大津留公彦のブログ2]
短歌実作者には参考になるでしょう。歌人の玉城徹さんが亡くなった。
短歌のことはお詳しくない方が多いでしょうから少し説明します。
玉城徹さんは北原白秋の弟子で「多摩」という歌誌に参加し「多摩」解散後はどの結社にも属さず、78年に歌誌「うた」を創刊した歌人です。
毎日歌壇の選者を長年やられていました。
(私も学生時代から数年「多摩」を継ぐ短歌結社である「コスモス」に参加していました。玉城さんとは白秋の流れをくむ仲間だった事になります。又、今手元にありませんが私の属する短歌同人「炎」の創刊直後の号に... [続きを読む]
» 「しがみつかない生き方」「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』を読み終わりました [大津留公彦のブログ2]
朝近所に住む姪が昨日勤務先の階段から落ちて足を痛めたので駅まで車で送って欲しいというので草加の勤務先まで送り届けた。
帰ってくると妻も娘もお出かけしておりました。
そこでクーラーのない我が家ではあまりに暑いので久しぶりに近所の三郷温泉に行って汗を流しました。
[続きを読む]
» 松本猛さんを長野県知事に! [大津留公彦のブログ2]
いわさきちひろさんと松本善明元衆議院議員の長男松本猛さんが明日告示8月8日投票の長野県知事選挙に出馬される。
政策の中のこのフレーズに共感した。
私の考えていた事だ。
黒部ダムが造られたときに、人類の英知だというふうに私たちは子ども時代に考えました。しかし今の時代では、ダムによって治水をする、あるいは多目的ダムを作るという考え方は無くなってきています。浅川ダムも当初は多目的ダムという形でしたけれども、変化をしました。今度は、時代というのはどんどんどんどん変わっていくんです... [続きを読む]
» 金賢姫に三千万円報酬、その出所は官房機密費? [大津留公彦のブログ2]
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2010/07/post_1406.html[続きを読む]
» 「みんなの党」を批判する! [大津留公彦のブログ2]
参議院選挙で私は一つ悔いがある。
会社の同僚が「みんなの党」のタリーズコーヒー創業者に入れると言った人に訴えきれなかった事だ。
その人の1票が小池晃さんに行ったとて小池さんは当選出来なかったが私としては忸怩たる物を感じている。
投票日前に書いたみんなの党批判の記事は他のブログでも取り上げられ反響を読んだ。
惜しむらくはこの小泉竹中路線の新自由主義政党批判が流れにならなかったからだ。
むしろtwitterでボランティアが集めたりタリーズコーヒー創業者はネットをうまく使った。
このネット戦略が当落を分... [続きを読む]
» 『東大闘争から地域医療へ 志の持続を求めて』を読んだ [大津留公彦のブログ2]
今日も暑い日だった。
喫茶店/図書館と涼しい所に場所を変えながら以前に近くに住む知り合いのFさんに貸してもらっていた本を今日読んだ。
それは
三浦聡雄さんと増子忠道さんの共著
『東大闘争から地域医療へ 志の持続を求めて』
» 辻元清美衆議院議員の社民党離党に思う [大津留公彦のブログ2]
今日辻元清美衆議院議員が社民党を離党した。
私は大阪府高槻市に住んでいた事があり友人に誘われて辻元氏を囲む小集会に参加したこともある。
社民党の生き残りのためには共産党と共闘する事と政党助成金を辞する事が必要だと提案し今すぐ辞退すると党が成り立たないが貴重な意見だと回答頂いた。
又、高槻の市長選挙の革新統一候補として考えた事もある。
NPO法案を前回一致で成立させた彼女の手椀は評価に値する。
以下の本人のブログによれば国土交通副大臣としても活躍されていたようだ。
そういう関係があるので今回の事... [続きを読む]
» 辻元清美衆議院議員の社民党離党に思う2 [大津留公彦のブログ2]
なかなか国政の運営に関わると政策や行動で筋が通せなくなるのだろう。
記者会見前夜一睡も出来なかった彼女が打算だけで動いたとは思わない。
しかし政党人として仲間や核となる支持者の事を考えればこの行動はとるべきではなかったのではないだろうか?
下にある離党会見のyoutubeの書き込みに「左翼の冬到来」と書いた人がいる。
右翼の人は大喜びのようだ。
この反応をみても逆にこの行動がどういう意味を持つかが伺える。
一部左翼からはこの行動を見放した態度がある。
しかしこれは護憲派としては見放す訳には行かな... [続きを読む]
» 辻元清美衆議院議員の社民党離党に思う3 [大津留公彦のブログ2]
辻元清美議員の社民党離党問題に付いての以下の2つの記事に反響を頂いている。
辻元清美衆議院議員の社民党離党に思う(大津留公彦のブログ2 2010年7月27日)
■辻元清美衆議院議員の社民党離党に思う2(大津留... [続きを読む]
» 共産党創立88周年記念講演会に参加した [大津留公彦のブログ2]
twitterでtsudaろうと思いましたがネットが通じなかったので会場を出て送りました。
送る順番が順番がまちまちになったので少し整理して家で記事にしました。
(正確な聞き書きではありません。正確には明日の赤旗をお読み下さい。)
日比谷公会堂なう
共産党創立88周年記念講演会会場
宮本たけし参議院議員が席を探してウロウロしている。
議員も冷やかし参加人も平等なのがいい。
意外と若い人が多いですね。
入口で高校生平和ゼミナールの高校生が今夜からヒロシマに行くというカンバをしていたので
「少な... [続きを読む]
» 「社会派すなわち人間派」山本薩夫 [大津留公彦のブログ2]
昨日はこの8月の「戦争と平和特集」を紹介しましたがその前に紹介しなければならなかったのですがこの所毎晩のようにNHKBS2で不屈のコミュニスト山本薩夫の映画を見ています。
今年は山本薩夫生誕100周年です。
「逆境を力に変えた熱血監督 〜山本薩夫生誕100年〜」と
「金環蝕」と「白い巨塔」はフルに見た。
「不毛地帯」は最後の方だけ見た。
(最近テレビドラマでやっていたのは見ていた。)
8月2日(月)20:00-21:00
「逆境を力に変えた熱血監督 〜山本薩夫生誕100年〜」
では親交のあった... [続きを読む]
» 「こがあな いびせえこたあ、ほかの誰にも あっちゃあいけん」 [大津留公彦のブログ2]
今朝8時15分職場でテレビの広島の平和式典に向かって1分間黙祷した。
そして子どもたちの発言の後の秋葉広島市長の読み上げた平和宣言は感銘を呼ぶ物だった。
印象的なフレーズは
・「こがあな いびせえこたあ(こんな恐ろしいことは)、ほかの誰にも あっちゃあいけん」
・平和を愛する諸国民に期待しつつ被爆者が発してきたメッセージは、平和憲法の礎であり、世界の行く手を照らしています
・人類滅亡が回避されたのは私たちが賢かったからではなく、運が良かっただけ
.今こそ、日本国... [続きを読む]
» 人間筏(「二重被爆 ヒロシマ ナガサキを生き抜いた記録」) [大津留公彦のブログ2]
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