シンポジウム「21世紀日本における学術の展望」
今日は、早朝仕事、団地の仕事をこなして、昼から、日本学術会議の表題のシンポジウムに行ってきた。日本学術会議は、今年4月に、「日本の展望―学術からの提言2010」という提言を発表している。その実物は、これ。
『日本の展望―学術からの提言2010』は、21世紀の人類社会および日本社会にとって喫緊の課題である持続可能な社会の構築を展望して、人文・社会科学、生命科学および理学・工学の全ての諸科学を包摂する「学術」がその総合力をどのように発揮すべきであり、することができるかについての学術からの提言である。
第1章は、提言の前提として、提言主体が自らの役割をどのように把握し、学術・科学・技術の相互関係、また学術と社会の関係をどのように認識しているかを提示する。
第2章は、21世紀の世界において学術が立ち向かうべき課題を具体的に4つの領域の「再構築」問題として位置づけ、学術がどのように貢献すべきかを展開する。
第3章は、世界の諸課題に立ち向かう現在の学術それ自体の発展動向を考察し、学術が進むべき方向を研究分野に即しながら明らかにする。
第4章は、日本の学術が21世紀の人類社会への十全の貢献を達成するために、学術に関わる政策と体制がどのようなものであるべきかについて具体的な提言を行う。
「日本学術会議は内閣府に所属する特別の国家機関であり、科学者コミュニティを代表して政府や行政に対して、勧告、要望、声明、提言などにより国の政策や学術に関して意見具申をする機能を持ち、人文・社会科学から生命科学、理学・工学など全ての学術分野を統括してその発展に寄与する。言い換えれば、日本学術会議は、我が国の学術全体を複眼的かつ俯瞰的に見ながら長期的に展望することを一つの使命としている。」1371人の研究者の手による、そう量1295ページにもおよぶ労作である。
日本の政治というものは、実は、専門家というものをなかなか認めない傾向が強いように思う。いわば知識人や研究者とうものを軽視する。科学技術政策などを見ても、効率的な技術の活用が中心で、基礎的な科学は軽視される。提言は、そういう実態に対する、するどい切り込みとなっている。
今日のシンポジウムは、
1.「日本の展望-学術からの提言2010」について-背景・目的・概要・意義-
●広渡清吾氏(専修大学教授・日本学術会議第一部部長、法学)
2.日本の科学・技術政策をどう展望するか
●海部宣男氏(放送大学教授・日本学術会議第三部会員、天文学)
3.持続可能な世界をどのように構築するか
●鷲谷いづみ氏(東京大学教授・日本学術会議第二部幹事、生物学)
4.21 世紀の課題としての知と教養の再構築
●藤田英典氏(立教大学教授・日本学術会議第一部会員、教育学)
5.人間と人間の関係の再構築と人文・社会科学の役割
●大沢真理氏(東京大学教授・日本学術会議第一部会員、経済学)
【コメント】
●福島利夫氏(専修大学教授、経済学)
●坂本武憲氏(専修大学教授・法学部長、法学)
というプログラム。広渡さんが学術会議の役割と提言の概要。海部さんが学術政策一般への言及。なるほど、一方では、日本は文系社会。このことがより科学への軽視につながるというわけか。海部さんの話は、一番骨格がはっきりする。鷲谷さんの話のときに、早朝仕事の反動で、やや聞いているボクの集中力がとぎれる。
英典さんの話は、あらためて教養という問題と教育の役割。難しい問題を矢継ぎ早に話されると、ついて行けないぞ。大沢さんの話も、貧困の問題を視野にいれつつ、結構、難解。
コメントなど、哲学的な議論にもなるが、海部さんがスパッと政治的に切る込むのはおもしろい。
やはり政治のあり方、社会のあり方と学術との関係が主題である。こういう提言が、さまざまな立場を超えて、知識人からなされることの意味を深く考えたい。
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