知的障害教育の開拓者セガン 孤立から社会化への探究
川口幸宏さんという研究者が書いたセガン。セガンは、障害児教育をかじったものなら名前は知っているけれど、ボクは、そんなによく知っていたわけではない。エドゥアール・セガンは、一九世紀フランスで、監禁、遺棄、あるいは殺害され、社会から孤立状態に置かれてきた知的障害者(「イディオ」)への教育実践にとりくんだ近代障害児教育創始者の一人。本書は、その知られざる前半生を、フィールドワークで明らかにする。
そこで明らかにされるのは、フランス革命後の激動の時代、サン・シモン主義の活動を通して、社会の矛盾に向き合い、どのように生きるのかを探究し続けた姿。その活動がゆえに、セガンはフランスからアメリカに渡らざるをえなくなるのだが、子どもの発達の可能性と教育実践への確信は、こうしたセガンの生き方と不可分にむすびついている。著者は必ずしも、障害児教育を専門とする研究者ではないが、だからこそ、このように本書は、セガンの思想的な成長を描いた新しいセガン像を明らかにするものとなっている。学ぶことの多い一冊だった。
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