「無縁社会」の衝撃
NHKで、無縁社会の再放送、再編集版と、その後の反響を追った「『無縁社会』の衝撃」をやっていた。夕方の再放送は、追加された部分、そして夜の番組をみた。
再放送の追加は、識者の討論。山井厚労政務官と宮本みち子さん、それから北九州ホームレス支援機構の奥田さん。奥田さんは、これまでもNHKの番組や、NNNドキュメントなどでおなじみ。やっぱり、奥田さんの話がいちばん説得力があり、胸にせまる。山井さんは、まじめな政治家だけど、ここに至っては、それだけのことをいいながら、具体的な変革への足をふみだせない犯罪性そのものがそろそろ問われるのではないのかなあ、そのことについてもっと自覚して欲しいと思う。宮本さんの議論も、現実の政治経済の構造のもとでは、ややあぶなっかしく感じる。これは後述。
さて、衝撃的なのは、夜の番組。
1月末に放送したNHKスペシャル「無縁社会」。放送後、“無縁“な人たちの間で、大きな反響を呼んでいる。NHKに届いた反響は1500件を超えた。その多くが、「無縁な自分の将来が不安だ」と訴える内容だった。とりわけインターネット上では、「祭り」といわれる異常現象が頻発。視聴者が番組を見ながらネット上に書き込みをするツイッター、掲示板、ブログで数十万を超える異常な頻度で書き込みがあった。
特に目立ったのは30~40代の書き込みだ。「ネットだけが“つながり”だと信じてきたのに、それだけでは救われないのではないか」、「結婚をはじめて考えるようになった」など、働き盛りの世代が自分と社会とのつながりを不安視する記述が目立つ。
単身高齢者が“無縁”で暮らす高齢者施設では、共同墓地の建設に着手するなど、生前から死後の準備をする動きが活発化している。“無縁ビジネス”ともいえる新たなビジネスは共同墓建設にとどまらず、保証人代行サービス、見守り代行サービス、話し相手サービスなど、様々な分野に広がっている。無縁社会と向き合おうとする視聴者ひとりひとりの生き様をルポするとともに、社会と個人のつながりが薄れつつある日本社会で必要とされる「絆」の新しい形とは何か、追跡する。
とくに若者の間での反響。興味深かったのが、若者の”孤立”とともに、”助けて”と言えないだけではなく、”動けない”若者の姿。そう考えると、ここで描かれている若者実態の個々の問題、たとえば雇用だとか、人間関係だとか、1つひとつもっと個別に深めなければならない問題があるような気がする。
となると、そこには、やっぱり、政治や経済の構造、たとえば格差だとか、階層・階級という問題と無関係ではないということももっと浮き彫りになるのではないのだろうか。
夜の番組の内橋さんのコメントは、それはそれで、大事なことを語っているのかもしれないけれども、やや情緒的というか、空想的な感じがする。夕方の宮本さんのコメントも同じで、社会が引き受けるうえでの負担の覚悟を言うが、その負担にも格差・階級差が歴然と存在することを無視して議論はできないと思う。
そういう意味では、大きな衝撃をあたえた社会現象の報道の背後にある、社会の構造にもっとせまっていくことが求められるような、そんな気がするのだけれども、どうだろうか。
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