現実と向きあう教育学
教育科学研究会のメンバーがつくった新刊を読んで。たしかに、貧困、荒れ、暴力、上からの「教育改革」――いま教育の現場、教師たち、そして子どもたちが直面している現実は多岐にわたる。このさまざまな困難を、「教室でおきていること」「子どもたちを取り巻く現実」「子ども理解と教育実践」「学習指導と学力」「教師の困難と成長」「地域と学校」「現代の日本社会と教育改革」という多角的な視点から読み解き、教師のはたすべき役割をさぐろうというのが本書のねらいなのだ。
だけれども、この本に対しては、現実は、そんなもんじゃない、本当に現実に向き合っているのかという批判が聞こえるかもしれない。たしかに、現実の教育や子どもをめぐる困難のなかでも、大きなウエイトをしめると言っていい、後期中等教育期の問題にさいている紙数は少ない。いじめや不登校、引きこもりや高校中退という問題にへの接近は少ない。民主的な教育研究団体を代表する教科研ではあるけれども、現実に起こっている問題をすべて引き受けるのはなかなか困難ではある。
ただ、そうであっても、書かれている論文の優劣があっても、やっぱり読んでいて、おもしろい。教師たちが現場で、悩みながら子どもと向き合う実践リポートが心を打つ。とくに冒頭の2本は秀逸。そして現場の実践が直面する課題にこたえる研究者の探究には、”あっ、そういうことだったのか”という新しい発見もある。1つひとつの論文に、かならず光るものがある。佐藤広美さんの論考のように、自身が現実に向き合う、思い悩む気持ちまで伝わってくるものもある。
教師をめざす人だけでなく、教育に関心ある人に、希望を語りかける一冊だと思う。
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