裁判員へ~元死刑囚・免田栄の旅~
もう昨日になるけれど、いつものようにETV特集を見た。
昨年5月スタートした裁判員制度。誰もが裁きの場にかかわる時代に、自分の体験を伝えようとする一人の元死刑囚がいる。強盗殺人の罪をきせられ死刑判決を受け、34年半を獄中で過ごした免田栄さん(84歳・大牟田市在住)である。今までのところ裁判員の判断は量刑判断にとどまっているが、今後、被告が無罪を訴える裁判に、裁判員が直面するケースが必ず起こる。その時、裁判員は本当に、感情に流されず、法にのみ支配された判断を下すことができるのか、免田さんには不安がある。えん罪事件がなぜ繰り返されてきたのか、なぜ、現在も続発しているのか、その検証が十分なされないままに、新しい制度が始まってしまったように思えるからである。
免田さんは、えん罪を生む構造、死刑を待つ恐怖について講演活動を続け、また獄中からえん罪を訴える人々の支援活動を行ってきた。そして去年の秋、新たな旅に出た。再審に挑む仲間を訪ねる旅であり、今も獄中から無罪を訴え続けている死刑囚を励ます旅であり、人が人を裁くことの意味を考え続けている司法関係者と対話する旅である。そして、自身の人生をたどり直す時間の旅である。
免田さんは84歳という年齢に達した今、身体の自由がきくうちに、生涯をかけることになったえん罪事件との戦いの意味を自ら再確認し、裁判員になるかもしれないすべての市民に訴えたいと考えている。…
番組は、免田さんの、えん罪事件の歴史の検証ともいえる旅の同行する。なぜ、つくられた自白をし、えん罪がつくられたのか。足利事件、松山事件、そして自身の事件。容疑者とされた人の絶望は、想像しても余りある。そして、長きにわたって獄につながれた日々のもたらすものの大きさも。なによりも、袴田事件の1審で、最後まで無罪を主張した裁判官の、自白調書を証拠として採用するかどうかをめぐっての証言は、衝撃的だった。
被害者の思いは重い。そのとき、容疑者とされた人間への視線を、感情的なものを超えて注ぐことがはたしてどれだけ可能か。普遍的な人権まなざしをボクらが、どれだけ持てるのか。感情的なまなざしが、これだけ、あふれる、この時代に、免田さんの訴えは、とても心に滲みる。
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番組紹介NHKHPから
=昨年5月スタートした裁判員制度。誰もが裁きの場にかかわる時代に、自分の体験を伝えようとする一人の元死刑囚がいる。強盗殺人の罪をきせられ死刑判決を受け、34年半を獄中で過ごした免田栄さん(84歳・大牟田市在住)である。今までのところ裁判員の判断は量刑判断にとどまっているが、今後、被告が無罪を訴える裁判に、裁判員が直面するケースが必ず起こる。その時、裁判員は本当に、感情に流されず、法にのみ支配された判断を下すことができるのか、免田さんには不安がある。えん罪事件がなぜ繰り返され... [続きを読む]
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