法服の枷 沈黙を破った裁判官たち
深夜にやっていたNNNドキュメント09を眠い目をこすりながら見る。
「裁判所という大きな組織、その中で出世を重ねるには上司に気に入られなければならない。幾つかの事件では真実は消え、被告人は泣いた」これは36年前、初めて「自衛隊の憲法九条違反」を認定した福島重雄さん(78)の日記だ。判決後、再び裁判長の椅子に座ることはなく、小さな家庭裁判所で退官の日を迎えた。「最高裁の人事制裁だったのだろう」と振り返る。1人が年間300件もの裁判を抱えることもあるという現状。「裁判が効率化し、官僚化する裁判官たち。その多くが良心と保身との狭間で葛藤している」と語る元裁判官もいる。市民参加の「裁判員制度」が始まり、“開かれた”と盛んにアピールされる反面、依然、“閉鎖的”との印象が拭えない現実を検証する。
福島判決は、伊達判決とならぶ憲法裁判である。とくにこの裁判で、現役の自衛隊幹部を次々と証人として出廷させ、尋問をおこない、自衛隊の実相を明らかにしたことは、その後の、この種の裁判の原型となる。
この裁判は、2つのことを問いかける。憲法と司法の問題、そして、司法のあり方の問題。後者の問題であまりにも有名なのが、この番組でも紹介された平賀書簡。当時、札幌地方裁判所所長・平賀健太が、訴訟審理中の裁判長・福島重雄に、申立てを却下するよう示唆した「アドバイス」と称する詳細なメモを出したというもの。
そして、自衛隊違憲判決をおこなった福島さんは、その後、裁判長にはなれない裁判官人生を歩むことになる。
昨年、福島さんは、『長沼事件 平賀書簡 35年目の証言』という本を出し、はじめて、当時のことを振り返って語った。この本の感想は後日。
番組では、『犬になれなかった裁判官』の著者、安倍晴彦さんも出ていた。こちらは、戸別訪問禁止を違憲とする憲法裁判をして、36年間苦難の裁判官人生を送った人。
はたして、司法官僚制度は、どのように民主化されていくのだろうか。
あたりまえのことだけれど、ドイツなどの違いに思いがよぎる。何年か前、「日独裁判官物語」というドキュメンタリー映画を見た。ドイツの裁判官には、市民的権利が保障され、当たり前のように、市民集会に参加し、労働組合が組織される。そこからは、社会の批判者(発展者)としての視点もはぐくまれるのだろう。
司法にかぎったことではないけれど、日本の官僚制には、それぞれ独自の歴史的な経緯がある。「脱官僚」「脱官僚支配」という議論がさかんだけれども、だいじなことは、憲法そして国民の人権を擁護する、あるべき官僚制へどう変わっていくのかということなのだと思う。どんな経緯のもとで、どのような課題があるのか、よく勉強する必要がありそうだ(これは余談)。
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