カルテだけが遺された~毒ガス被害と向き合った医師の闘い
今日は、朝から団地の草取り、階段清掃とかなりハードな肉体労働からはじまる。汗ボトボトになる。着替えて、職場に向かう。2本目のインタビューの整理をすすめる。3分の1ほどすすめる。
夜は、NHKを見る一日となる。
瀬戸内海に浮かぶ周囲4キロの島、広島県大久野島。この島には終戦まで、国際条約違反として使用が禁止されていた毒ガス兵器の極秘製造工場があった。工員として働いていたのは、地元で暮らす人々。誰もが、家族のため、国のためと信じて懸命に毒ガスを造り続けていた。そして戦後、彼らの多くは、毒ガスを間接吸引したことによる重い後遺症に悩まされることになった。
この番組は、戦後一貫して毒ガス被毒者を診療し続けた医師・行武正刀さんを、3年間に渡って取材した記録である。行武さんが診察した被毒者はおよそ4500人。そのカルテには被毒者の病歴と一緒に、診察の合間に彼らが漏らしたさまざまな言葉が記されている。「彼らの言葉は戦争の貴重な記録である」そう考えた行武さんは膨大な時間をかけて、証言集を編さんし始めた。しかし去年春、肺にがんが見つかり、今年3月帰らぬ人となった。享年74。被毒者を見守り続けた一人の医師の半生をたどりながら、戦時中の毒ガス製造の実態と毒ガスにほんろうされた人々の苦悩を伝える。
これはなかなかよかった。さすがに日本軍の毒ガス使用について、追いかけてきた蓄積をもつだけのことはある。
番組そのものは、医師の姿を追っている。この人が、政治的にはどのような立場の人だったかはよく知らないけれど、その仕事は心を打つ。番組では、被毒者のほうを追いかけたわけではないが、その淡々としたドキュメントのなかでも、被った苦しみは伝わる。毒ガス兵器の被害が、時をたってあらわれるということは、十分のよく理解していなかったので、あらためて、この被毒者の戦後の苦悩というものを考えさせられた。補償や医療の遅れもそうだけれど、その苦しみを共通の認識にしてこなかった政治と社会というものについて、多くのことが問われているという気がした。
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