気骨の判決
今日のNHKスペシャルでやっていた、ドラマ。
戦時中に起こった政府主導の選挙妨害事件に立ち向かった裁判官、吉田久が判決を下すまでの道のりを描く。清永聡原案、西岡琢也・作、柳川強演出。1942年、当時首相だった東条英機は、政府に反対する国会議員を排除するため衆議院を解散し、総選挙を実施。政府に非協力的な候補には露骨な選挙妨害が行われ、議席は政府主導の大政翼賛会が独占した。鹿児島選挙区で落選した議員から選挙無効の訴えを受けた裁判官、吉田(小林薫)は選挙妨害の事実確認のため鹿児島へ飛ぶ。吉田は200人にも及ぶ有権者らに尋問を行うが、誰も真相を話そうとしない。そんな中、吉田の自宅には特別高等警察の監視が付く。さらに吉田は、司法大臣(山本圭)から原告側敗訴の判決を出すよう命じられる。
こんな事件は、知らなかったし、こんな判決があったとも知らなかった。だいたい、戦前の天皇制のもとでの、司法制度などについては、あまりまともに関心をもったことがなかった。それだけに、興味深かったし、法の精神にのっとって、時局に流されない判断をした、この判決には強く惹かれた。弱いに人間の代表としての自覚、なども、共感する。
では、主人公は、この時代全体にあった、さまざまな困難について、また人間性を踏みにじるような事態にどんな葛藤をしたのだろうか。そういったことも知ってみたい。もちろん、全体としては、天皇制を容認・支持するような政治的な位置のなかに彼はいたのだろう。しかし、そのなかでも、たぶん、いろいろな葛藤があったことは、子どもたちを戦場に送る校長と、自らの子どもを戦場に送る主人公との会話のなかに出てくる。
主人公は、戦後、鳩山一郎のもので憲法草案の作成に協力したり、中央大学の教授として、安保条約反対闘争には批判的だったが、警察の暴力を見て、態度を変えたなどの話もあるそうだ。それだけに、こういう人が、ドラマで取り上げた事件だけでなく、この気骨そして伝説の判事が、全体として時代をどうとらえ、それに葛藤し、押し流されそうになったりしたのかという、生の人生に強く関心をもった。
いろいろな意味で勇気をあたえてくれる、見応えのあるドラマだった。
ETV特集のほうの感想は後日。
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