日本海軍 400時間の証言 第二回 特攻 やましき沈黙
台風が近づく。朝から、交通機関が乱れる。やっと職場につき、今日はインタビュー原稿と格闘。夜までかかって、いったんは完成。
さて、NHKスペシャルの昨日の続き。
人の体を兵器代わりにして体当たりする”特攻作戦”。これまで現場将兵の熱意から始まったとだけ伝えられてきた。しかし、海軍反省会のテープは、「神風特別攻撃隊」の一年以上前から『軍令部』が現場の熱意とは別に、組織的に計画、特攻兵器を作り続けてきたことを赤裸々に語る。さらに『軍令部』の元参謀は「特攻」はあってはならない作戦と自覚しながらも、その計画を推進してきたことを証言する。
海軍から始まり、陸軍にも広がっていった「特攻」で亡くなった将兵は5千人以上。そのほとんどは20代の若者たちだった。
過ちと分かりながらなぜ当事者は「特攻」を推し進めていったのか。反省会の議論から「特攻」を生んだ組織の姿を浮き彫りにする。
「外道の統率」と言われた、特攻というものの愚かさは、すでに多くの人の手によって語られている。この作戦を、実際に立案・遂行した軍令部のメンバーは、戦後、どのように語ったのか。
番組では、大西中将によって神風特攻が実施される、はるか以前から、43年ごろから特攻兵器の開発に心血が注がれていたことが明らかにされる。回天や桜花、震洋などよく知られている兵器のほかにも、さまざまな兵器開発がおこなわれていたということに、驚かされる。なぜ、こうも日本軍は、特攻というものに、早くからのめり込んでいったのか。
そして、戦後、あまりにも、まともにこの誤りに、関係者たちが向き合おうとしなかったという事実にも、おどろかされる。番組は、「やましき沈黙」という表現をしたが、そのような軍隊の体質に解消してはならないような気がする。関係した一人ひとりが、その責任とはっきりと向き合うことから、誤りの是正というのははじまる。しかし、この点を、これまで多くの人が語っているようには思えない。
もう1つ。昨日の番組とちがって、「反省会」で多くの人が、語ったわけではないからであろう、むしろ、いろいろな取材証言によって構成されていた。その分、興味深く見ることができたし、特攻をめぐるいろいろなことも知ることもできた。ただ、実際に、この作戦を強いられた若者の実相に迫ったとは思えない。その葛藤や苦しみにもせまってほしい。
日本軍と日本の戦争の愚かさ、誤りが、当事者の口から語られている。これがこの番組の大きな意味があるのだろう。ただ、番組では、日本の加害ということが、昨日も今日も語られることはない。先の責任とならんで、この「反省会」の語り手たちが、人間性を未だ抑圧しつづけ、自らを人間として取り戻そうとしない姿があると書いた意味でもある。
別のチャンネルでは、「最後の赤紙配達人」という番組をやっていた。となりでつれ合いが、こちらのほうを見ていたので、チラチラと見た。
今回で3回目となる<シリーズ激動の昭和>、今回は戦場への“招待状”ともいえる召集令状、いわゆる“赤紙”の配達人、西邑仁平氏をドラマの主人公にし、 ドキュメンタリーとドラマをあわせた構成となる。西邑氏は俳優・吉岡秀隆が演じる。
滋賀県の大郷村。この村からも多くの若者が戦場へ向かった。西邑氏は、赤紙を配る兵事係を15年もの長い間勤め上げた。 赤紙を配るだけでなく、戦死した知らせを家族に伝えるという過酷な仕事を黙々と勤めた西邑氏は、残された家族や村の人への気配りや心のケアも忘れなかったという。 大郷村には5名も戦場に送り出した家もあり、そのお宅へ戦死の知らせを伝えるときには、涙が出るほど辛かったと回想している。
ドラマの部分では西邑氏の苦悩や戦争に巻き込まれていく大郷村の家族の様子を描く。
ドラマとドキュメンタリーを織り交ぜながら、ていねいにつくられた心うつ作品だったとは思うけれども、この番組にも、加害というテーマはない。
強いられた戦争のなかで、どれだけ日本の兵士や国民が、抑圧され、極限状態を強いられたかを見つめることにはたしかに意味がある。そのことに光をあてることが、日本の加害の本質を見つめる上でも、大きな意味をもつとは思う。ただ、テレビで、ここまで加害について語られないことは、やはり気になる点でもあるのだけれど。
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