日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか
児童精神科医として診察をし、学校現場からの相談も受けている著者は、「居場所がない」「疲れた」と訴える子どもたちと日々接している。そのような中、日本語の子ども版QOL尺度の開発に関わり、調査を行ったところ、多くの子どもたちが自分に自信がなく、自分自身や学校などの満足度に関する質問に対し、下から2番目の「ほとんどない」という答えを選択していることに衝撃を受ける。5段階の下から2番目が「標準」となっている日本の子どもたちの心の現状。ユニセフの調査でも、日本の子どもの主観的な幸福度は、他国と比べて突出して低いことが報告されている。 本書では、調査結果や診療・学校現場での豊富な事例をもとに、自尊感情という視点から、子どもたちの現況を見つめ直す。
QOLという子どもの生活の質の安定というものを調べる調査では、とりわけ日本の子どもたちの自尊感情の低さが顕著だという。上記の通り、それはユニセフの調査にも対応している。このQOL調査の有効性は、勉強しないとよくわからないが、かかれている内容は興味深いし、勉強にもなる。たとえば、この自尊感情は、前思春期の時期から低下し、中学生で大きく落ち込むわけだが、高校になっても回復しないという。高校入試のストレスというより、入試制度そのものがつくりだす発達のゆがみというものを感じる。
実際の事態は、子どもの成長や生存の危機と言っても良いような実際がある。自尊感情をはぐくむには、まず家庭を直接支援すること、そして学校を支援すること――学校の活動を管理したりするのではなく、子どもを中心とした活動が自由に豊かに展開できるように支援すること、しかも、現在の子どもの実態を考えたとき、たんに教員とりくみだけではなく、養護や事務職員、カウンセラーやソーシャルワーカー、さらには学校外の福祉や医療の機関と一体になったとりくみをすすめることが大切だということを、強く教えてくれる。
そのこととも関連するけれど、本書の著者がたとえば教育に踏み込んで発言する内容は、若干、心許ない。30人学級などの指摘は、共感できるが、全体的にはやはり、心理主義的であり、社会のあり方、制度のあり方により踏み込んで考えていくとき、学際的な議論をもっとすすめる必要があるのだと思う。
もう1つ。QOL調査は、高校1年までを対象としている。若者の実際の自尊感情の低さを考えたとき、若者期を対象にした議論も期待したところでもある。
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