政権交代論
民主党の代表選がおこなわれたということもあって、民主党を考える際につねにつきまとう、「政権交代論」のいまを考えたいと思って、この本を読んでみた。もともと、今月の論壇誌にすでに、「政権交代」の文字は踊っているのだけれど。
この本の帯には、「変えてみる経験が 政治を鍛える 生きにいく時代に民主主義の力を!」とある。たしかに、代表選後の世論調査を見ても、自民党政治を終わりにしたいという願いはものすごく根強いことはよくわかる。が、そのうえに立っても、この本の編集意図、執筆意図というものはボクにはほとんど理解できなかった。頭が固いのだろうか?
でも、どうもこの山口二郎さんというのは、ずっと理解できないでいる。
ものごとには、現象と本質というものがある。現象的には、似通ったことがらであっても、本質までたどっていくと、まったく性格を異にする事象というものがあるのだ。けれど、その現象レベルの問題と、本質的な事柄とが、どうも錯綜していて、議論の筋がよくわからないのだ。
アメリカやイギリスの議論は、ボクには恣意的としかとらえられないような、とりあげかたに見える。
日本の政治を論じるとき、彼の民主党とのあまりにも近い距離が、結局、議論をもつれさせてしまう。小沢民主党の参院での勝利は、この党が、ヨーロッパ的な社会民主主義政党へのすすもうとしているからだという。たしかに、小泉的な改革にアンチテーゼを小沢は示したという面はある。が、それは本質的なところまでたどった、批判と改革のビジョンでありえたのか?は、大連立やその後の、この党の国会での対応のもつれに現れているのだと思うのだけれども? そして西松問題が鮮やかにその本質を示したとも言えるのだろうけれども。
政権交代の対抗軸とは何かのか、彼のいうメタと中身も錯綜しているように思えて、混乱してくる。その前提となる、いまの政治の問題が何で、どんな対抗軸が必要なのかは、どうも見えてこない。
政権交代ある政治はイコール、2大政党制ではないし、ましてやその対抗軸が民主党ということではないだろう。たぶん、いちばんの違和感は、現在の政治のプレーヤーが健全な民主主義の担い手になるということへの無邪気なぐらいの信頼が彼にはあることだろうと思う。その点で裏切られ続けてきたのが、93年以来の政治なのではないのか思うのだけれども。どうなんだろうか?
国民の現状と、こうしたプレーヤーがすすめる政治との乖離は、激しく大きい。それが、自民党政治を終わりにしたいという国民の願いの本質なのではないのだろうか。
個々には共感するような論点は少なくない。護憲の立場を貫こうとする姿勢にも共感する。でも、この人の文章はいつも頭が混乱させられる。
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