子どもの貧困と就学援助制度
かなり今月の原稿のメドが立ちつつあると言っても、今月は、物理的に仕事量が多くて、朝から、目の回るような仕事の忙しさに追い立てられる一日だった。目先の仕事で追い立てられているというのに、ある人から「就学援助」について、調べてほしいと言われて…。ほんとうは、事務職員の研究会方に連絡をとるなどして、いろいろ調べる必要があるのだろうけれど、時間がないので、インターネットでとれる資料をまず集める。
帰りの電車のなかで、その1つ、参院の企画調整室の鳫咲子さんという方が書いた、表題の論文を読む。参院のHPから、『経済のプリズム』という雑誌のページにいくと、今年の2月号に掲載されている。
就学援助制度についての研究は実は少ないし、調査も多くはない。実施主体が、国ではなく、市町村にあるので、その制度の基準も運用もバラバラなのが実態である。とくに準要保護世帯の就学援助は、05年に国庫補助がなくなったため、まったく市町村に任されることになっている。ところが、援助をうけている世帯は、実は、この十年で2倍になっていて、その要因は、リストラなど世帯の経済的要因にあることも明らかになっている。
これまで、文部科学省による調査は、64年と06年に2度、実施されている。64年の調査によると、財政力の低い市町村ほど就学援助受給者が多く、就学援助を行う必要に迫られながら、十分な援助が実施されにくいことが明らかになっていた。06年の調査では、その傾向とともに、都市部での援助率が高くなっているということが明らかになっている。これは、この制度の周知のありようとかかわっているようだ。そのために財政力と就学援助率の右肩下がりの線が二重にできるようになっているということのようだ。支給額は、現在は、財政力に比例するようになっているようだ。就学援助の制度の重要性から考えると、市町村任せの現行の制度のもつ問題は、すでにこの調査でもある程度明らかになっているとも言える。
もう1つ、藤澤宏樹という大阪経済大学の准教授の書いた、「就学援助制度の現状」という論文も読んだ。ボクは知らなかったのだけれども、憲法、社会保障法の研究者のようだ。だいたい、これまでどのような議論があったのかということもほとんど知らないし、これまでの研究調査が、小川政亮さんのような社会保障の研究者が中心で、教育学の側での議論が少ないのはちょっと驚きでもあった。憲法研究者の手によるものだけに、理念だとか原則というものを確認しながらの議論は、とての勉強になる。
子どもの教育にお金がかかる。いいかえれば、教育を含めた家族の生活が、その主たる働き手の就労による賃金に極端に依存しているという日本の特徴が端的にあらわれている。そこに、自己責任論が襲いかかっているということか。
施策の成り立ちで、いろいろな調査を見ると、就学援助がほんとうに権利として位置付いているのかは、いろいろ考えさせられる。運用でそのように努力しているようなところもあれば、そうでないところある。かつて権利として宣言していた自治体があった(長崎県香焼町)ことも初めて知った。もう少し、勉強したいと、帰りの電車で眠気を押さえての、勉強であった。
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