ルポ 雇用劣化不況
朝日新聞の竹信さんのこの本を読み終えた。さすがに、取材の目の付け所は見事。今の経済危機の1つの側面を見事に言い当てている。
堤・湯浅対談の本でもそうだったけれど、NOと言えない労働が広がり、雇用が劣化する背景には、非正規の、拡大の象徴される「賃下げ依存症」という現在の日本経済の側面があり、それが、昨年の秋からの経済危機で「津波」として到来した。しかし、この労働の劣化を特質とする経済のもとでおこなわれていることは、たとえば「労災が見えない」ということであり、その結果は、」「しわ寄せは『お客様』に」というほど、ものづくりやサービスを劣化させている。しかもそれは、民間企業でおこなわれているだけでなく、もはや公務労働の場でも主流になりつつある。 「公」が雇用をつぶしている。
こうして、問題は非正規だけの問題ではなく、正規労働者そのもののあり方が問われるようになる。そのなかで、「 『名ばかり正社員』の反乱」がはじまっている。そして、いままだまだ小さな動きだけど、ユニオンという形で新たな「労組の発見」がすすんでいる。「反貧困との連動」し、そして「派遣村」へ広がった。著者は、こうした流れの中で、経営や既存の組合が失ったもの、そして今後求められることは、「現実からの再出発 」だということなのだろう。
著者は、とくに経済のグローバル化のなかでの、日本経済の変化、雇用をとりまく状況の変化ということに注目する。それはたしなに、一つの大きな側面でもある。が、では、なぜ、それがなぜ、日本でこのように固有な特徴をもつ形で、進行し、餓死までもおこすような事態をつくったのか。そこにある、日本経済の特徴というのはなになんだろうか。たとえば「解雇」ということをめぐる問題。それは、どうなのだろうか? 本当に、これまでに日本では、解雇から守られていたのだろうか?そんなことは、ちょっと気になったりはするのだけれども。
どうだろうか。
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