家のない少女たち
N先生の紹介でこの本を読んだ。
虐待などが原因で、家にいられなくなった少女たちの話である。そしてその背景には、貧困がある。母子家庭の困難は、困難だといわれながら、実はそのことは社会的に共有されているわけではない。そのことをまざまざと見せつけてくれる。
週刊誌のルポライターの手によるものだけに、やや誇張された、センセーショナルな取材対象が多いにしても、あまりにも切なく悲しい。
奔放な10代少女の逸脱ばかりがクローズアップされたテレビの「プチ家出」報道。だか、その後の家出少女について、誰が何を語っただろう。親からの虐待や貧困、施設からの脱走など様々な背景を抱えて路頭に迷う「家に帰れない」少女たち。彼女らは食べるため、そして寝床を確保するための売春を強いられる、いわば日本のストリートチルドレンだ。そして、皮肉にも行き場を失った少女らの受け皿となったのは、下心を秘めた「泊め男」や、未成年でも雇用する違法売春組織だった。踏まれ、利用され、社会の生ゴミ扱いされ、それでも立ち上がる!8年近く続けた取材で見たのは、圧倒的不遇の中でも力強く生き抜く少女たちの姿だ。
この手の本のなかでは、おどろくような長く、そしてまっとうな、「あとがき」にこの著者の思いは凝縮されている。それだけでも十分に共感ができる一冊である。
著者は、そこで児童福祉の抜本的な強化を訴える。そうだ、滑り台から転げ落ちた彼女たちに、福祉は、児童養護は、何も機能しない現実がある。それは、著者が言うように、現状でどんなにその施設の職員たちががんばってもである。
そこには、救いようのない貧困の現実と、孤立した少女たちの姿がある。ある人がかつて、子どもの権利とは、愛される権利だと言った。言い得て妙である。子どもの権利のことを大人に対して主張するkじょとだというような見方もあるけれど、大事なことは、安心して、自分の思いを語り、そして受けとめて、成長への援助をうけることができる、そんな信頼できる人間関係なんだと思う。結局、彼女たちは、その信頼できる「場」や「人間関係」が失われているのだから…。
そして、その結果、「そのようにしか生きることのできない」という現実がある。その彼女たちの現実をまること受けとめながら、ボクらは問題を考えていかなければいけないと言うことなのだろう。言いようのない「孤立」。そんなところに、彼ら、彼女らを追いつめる日本の社会、政治とは何なんだろうか。
テーマは「援交」。かつて、このテーマを追いかけていたルポライターに黒沼さんがいた。生前、何度かお世話になったことがある。でも、その時代と、このテーマは大きく様相を変えてしまったようだ。いつも、弱い人の側にたとうとしていた彼が、いまのこの状況を見たら、どんなことを考えただろうか。そんなことも考えながら読んだ。
去年、東南アジアの子どもたちの買春と、臓器売買を描いた「闇の子どもたち」が話題になったし、このブログでは取り上げた。では、日本の子どもたちはどうなんだろうか。日本の子ども・若者の「孤立」をどう受けるのか。目をそらしてはいけない現実がある。
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