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2009/03/17

あなたの知らない貧困

Dw_h 週刊ダイアモンドという雑誌があります。経済誌のなかでも、ちょっと品がないなあという印象があります。取材先で、若い記者に出会うことがありますが、もっと勉強してこいよという思いと同時に、若いから必死だなあというちょっと微妙な感想をもちます。さて、そのダイアモンドが「あなたの知らない貧困」という特集を今週号で組んでいます。コピーは、「目に見えない貧困が日本を蝕んでいる。生活保護受給者が急増し、派遣切り・雇い止めに遭った非正規労働者が路頭に迷い、子どもの7人に1人が貧困状態にある。今そこにある貧困を直視し、対策を講じなければ、数年後、数十年後には社会が壊れる」。

Part 1 生活保護破産 日本に取り憑いた「貧困」
Column 保護率を急低下させた北九州市の成功と失敗
Manual 本当に困った人のための生活保護受給マニュアル
「貧困」を読み解く!
Part 2 非正規の壁 「1800万人の貧困」の実像
Interview 東京大学社会学研究所教授●玄田有史
Part 3 子どもの貧困 7人に1人が苦しむ「日本病」
Column 国民健康保険料の不払いで自らの首を締めた八街市民
Column 政府と国民の無知が生んだ「官製貧困」の知られざる罪
Part 4 貧困ビジネス 社会的弱者の敵か、味方か
Column 貧困ビジネスが生む「ネットカフェ住民」
Diagram 貧困が貧困を生む負の連鎖
Part 5 反貧困の処方箋 中間層の無関心が社会を壊す
Interview NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長●湯浅 誠
Interview 三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長●中谷 巌
Interview 経済評論家・上武大学大学院教授●池田信夫
Interview 起訴休職外務事務官・作家●佐藤 優
Interview 津田塾大学国際関係学科准教授●萱野稔人

 全体として、よく取材して、まじめにつくっている印象があります。この点では想像以上と言っていいかもしれませんね。ただ、なぜ、今日、貧困が社会問題となったかということには十分には迫れません。
 処方箋も良心的ということが言えないことはないかもしれませんが、どうしてもずれてきますし、ともすればまちがった結論に向かいかねないものを含んでしまいます。バランスをとっているというよりも、矛盾した内容をかかえてしまっているというほうがいいかもしれません。

 貧困の問題は、現象的には社会政策上の問題です。ただ、その背景には、社会政策にとどまらない財界の意向を組む政治による大企業の利潤の拡大を求める政策という面があります。それは、雇用などに端的にあらわれている。このことを不問にすると問題が見えなくなります。ダイアモンドの処方箋で、それが端的にあらわれるのが、雇用の問題です。とりわけ解雇の規制緩和を求めるところは、結局は、セフティーネットの充実を求めることで、より生産調整を自由にすすめようという財界の要求を代弁することになっていますから。総じて、コメントも良心的なものが、多いだけに、こうした点を意図的につくっているのか、それとも鈍感なのか。
 いずれにしろ、この種の議論に、もっと社会科学の視点が内包されてこないとダメだなあと思いました。

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