重慶爆撃とは何だったのか―もうひとつの日中戦争
小沢さんはやめないのですかねえ。政治の世界は、ちょっと考えられないような状況になっているようにしか思えません。でも、その話題は、また、後日。
さて、最近読んだ本のなかで、なかなかの労作だと強く印象をもったのがこの本。
空爆というのは、現在でもガザやイラクなどでくり返され、民間人の死者は後を絶たない。しかし、そうした戦略爆撃というものが、日本軍の手で発展させられたということはあまり知られていない。その画期となったのが重慶爆撃である。南京の陥落後、地上からの攻撃が難しい首都を重慶に移した中国国民党政府に対して、日本は壊滅的な打撃を絶えるため、地上戦とは無関係な空爆という方法を考え出す。ここで、焼夷弾などの技術も発展する。この重慶爆撃は、中国側の抵抗もあって、次第に無差別爆撃の様相を呈するようになる。
本書では、日本軍の資料や中国側の記録を駆使して、この重慶爆撃の実相を明らかにする。日中戦争からアジア・太平洋戦争のなかで、この日中戦争の出来事がどのような意味をもったのかという点もとても興味深い。
同時に、この本では、中国の側からみた重慶爆撃の意味も明らかにしている。とりわけ半世紀以上のときとへての、被害者の声の発掘は特別の意味がある。その困難は、戦後社会での困難につらない、そのまま、日本の戦争末期の、空襲被害の人たちの姿ともだぶってくる。
この爆撃は、明らかに東京大空襲やヒロシマ・ナガサキなどの被害に連なる。だからこそ、戦後の戦争裁判では問われることはなかった。そして、日本の記憶からもスッポリと抜け落ちることになる。
おりしも日本では、この重慶の被害ともに、東京と大阪で空襲被害の裁判がおこなわれている。その裁判は、まさに、「空襲」の非人道的な「論理」を問いかけている。そのことを浮き彫りにした労作とも言える一冊である。
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