菜の花畑の笑顔と銃弾
月曜日に放送されたNHKスペシャル。再放送の昨日、見た。
昨年8月、アフガニスタンで殺害された伊藤和也さん(31歳)。今、ここに彼が撮影した写真3千枚が遺されている。5年に渡り撮影された写真には現地の人々と共に格闘した用水路建設、農作業の苦闘、地元の食事に招かれ共に談笑する姿、そして緑が戻った大地で一面の菜の花を駆けめぐる子供達の笑顔が印象的に写されている。写真に写されたアフガニスタンの人々は今、彼らのために働いた伊藤さんが、なぜ銃弾による非業の死を遂げねばならなかったのか、問い返す日々を送っている。「彼が遺してくれたものとは何なのか」。番組では、遺された写真やメール、手紙などをもとに、写真に写されているアフガニスタンの人々を訪ね、ひとりの青年の軌跡を克明にトレースした映像をもとに、戦乱の地の過酷な現実、救援活動の試行錯誤、国際援助のあり方を浮き彫りにする。なお、現地には外国のメディアは入ることを許されず、今回の撮影映像は、最新の状況を伝えるスクープ性の高いものである。
さつまいもの栽培に何年もとりくむ。アフガニスタンの人々の暮らし、復興に必要なのは、水、食料、仕事。この国の人々がそれにとりくむことができるようになってこそ、紛争の解決ができる。あらためて国際援助のあり方を考えさせられるし、いまの国際社会のアフガニスタンへのかかわりをするどく批判する。
はたして、アメリカの増派のみならず、ISAFやPRTのような枠組みは正しいのだろうか?
民主党の犬塚議員らが民主党のアフガン和平素案なるものを発表している。くわしくはここ。
もちろん、9条に対する見解にしても、平和維持活動についての考え方も、ボクとはかなり距離はある。それをあえて横において、この素案をどう考えればいいのか。注目点もあるのだろうが、疑問も少なくない。アフガン情勢についての見方、アメリカへの説得の可能性など、もっと議論が必要だろう。その仲介役がはたして日本がふさわしいのかという根本的な問題もある。アフガンでも、日本はすでにアメリカの同盟国としての評価が広がりつつあるという現実がある。
なによりも気になるのは、この素案は共同と朝日のみが報道している。はたして、民主党の一致した見解になるのだろうか。
いずれにしろ、外務省は、アフガンには前のめりだといわれている。おそらく早晩、要員をアフガンに派遣することを考えているのではないのだろうか。もちろん、外務省の前のめりというのは、アメリカへの貢献以外なにものでもない。その先には、陸自の派兵があるのだろう。
だからこそ、アフガニスタンの問題で、日本はどんな貢献が求められているのかということの真剣な議論が必要だと思う。いろいろな議論がなされ、ほんとうにアフガンの再興につながる答えを見つけだしたいとつくずく思う。知人が、先日、アフガンに取材に行っていた。そこで暮らす人々の、経済的困難と治安の悪化は深刻である。
伊藤さんたちの仕事を、もう一度、しっかり見つめたいと思いながら、この番組を見ていた。
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