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2009/02/04

苦しみは家族のなかに沈殿する

 今日、こんな裁判の判決があった。

【無理心中判決】「生きてほしい」思い届くか 死刑望んだ被告(産経新聞)

 さいたま地裁で4日、殺人と承諾殺人の罪で懲役7年の判決を受けた福島忠被告(57)。無理心中を図って愛する家族を手にかけ、自分だけが生き残った福島被告に、若園敦雄裁判長は判決言い渡し後、「あなたが生き残ったことにも意味がある」と説諭した。前回公判での被告人質問で「死刑にしてほしい」と供述していた福島被告は、「はい」とか細い声で応じていた。
 …結婚1年後に生まれた待望の長男には障害があった。医師からは、20年くらいしか生きられないと告げられた。妻は半狂乱状態に陥り、自分を責めたという。
 平成19年、55歳の時に40年間務めたタイヤ販売会社を辞職。長男の介護に汗を流し、時には3人で旅行に出かけることもあった。
 しかし、徐々に歯車が狂い出す。体調が悪化し、絶望感にとらわれた妻は、20年5月ごろから「手首を切ったが1人では死ねない。3人で逝こう」と、心中を迫りだした。8月にはナイフを手にして、「私を殺して」と福島被告に求めた。
 「遺書を書いた」「3人で逝ければいいけど、お父さんだけ残っちゃったら大変。お願いします」と、心中を請う妻の説得を続けたが、妻の意志は変わらない。
 「妻がいないと長男は生きていけない」。9月10日、福島被告は2人で寄り添って寝ていた妻と長男に果物ナイフを振り下ろした。
 「刺した後にどんなことを感じたのか」。弁護人からの問に、福島被告は「地震が起きたような感じがして吐き気がした」と、淡々と述べた。
 福島被告は、凶行まで家族のことを誰にも相談していなかった。裁判官は、この点を聞いた。
 裁判官「施設に長男を預けることは考えなかったのか」
 福島被告「考えたことがあるが、預けないという気持ちが強かった」
 裁判官「預けられると、長男が幸せではないと思ったのか」
 福島被告「そうです」
 裁判官「それは親のエゴでは」
 福島被告「手放したくなかった」
 判決で若園裁判長は「殺害するほかにも取るべき手段はあった」と指摘した。
 福島被告は勾留中、毎晩のように家族3人で暮らしていたときの夢を見るという。…

 許されることではないけれど、とても切なく悲しく、残念な事件だと思う。

 なぜ、いつから日本では、苦しみを家族で抱えるようになったのだろうか。というか、より正しくは、むき出して、家族だけが背負わなくればならなくなったのだろうか?

 数日前、若い、私大受験生と、学費の問題で話す機会があった。少なくない学生が、「うちは、大丈夫ですから」という趣旨のことを言っていた。日本の学費の現状は、一部の家庭をのぞいては、大丈夫なはずがないのである。なにかしら、学費は、家族が抱え込むのが前提のように考えざるを得なくなっているという現状があるのではないか――言い換えれば社会が学費を担うこということなど考えにもおよばないというような現状があるような気がする。そのぐらい家族の責任ということが、ボクらに巻き付いているような気がしたのだ。それが日本の自己責任論というものをわかりにくくしている一つの形態ではないのだろうか。

 苦しみは家族の中に沈殿する。それが日本の痛ましい現状である。

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コメント

この文章読ませていただきました。

 障がいを持ったお子さんが生まれると親御さんは苦しみに陥りられます。
悩みも尽きないでしょう。今までの生活リズムも改変しがちです。
痛ましい事件です。僕自身もこれを読ませていただき見入ってしまいました。

 僕自身も先天性奇形(重度の腸奇形)で生まれてきました。生まれたのは60年前です。
その当時は障がい児が生まれてもどこにも相談出来るようなところがなかったです。
また、家族関係もおかしくなりがちです。
母も僕を産んで相当苦しんだと思います。幼い時から目のあたりにしてきました。幼心でも敏感で母の様子もわかります。
これは僕が成人してから母から聞いたことですが、「おまえが不自由な体で生まれて悩み苦しみ、
おまえを抱っこして何回、踏み切りの前に立ち汽車に飛び込もうとしたか」という話を聞きました。
これはあくまでも僕とこの家の事であります。

 障がいのあるお子さんの親御さんたちは、みんな頑張って前向きに頑張って生きておられるのです。僕の母の例でもなにかで考えが変わり育ててもらったと思っています。

 とりあえず、この文章を読ませていただき僕自身の感想です

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