キムはなぜ裁かれたのか―朝鮮人BC級戦犯の軌跡
少し前に触れたことのある尊敬する内海愛子さんの著書。読み切れずにおいていたものを、ここ数日で読み切った。おもしろかった。
朝鮮人BC級戦犯とは、収容所の監視員として募集され、末端の監視員として、捕虜を虐待した罪で裁かれた戦犯である。日本軍は、東南アジア・太平洋の国々で、飛行場や鉄道(例えば泰緬鉄道)を建設することため捕虜を動員したが、その生存の条件を配慮せず、酷使し、多数の人間を死に至らしめた。
たくさんの戦後処理の問題の現場を歩いた内海さんの本である。朝鮮半島の植民地支配の問題、東南アジアや太平洋での日本軍の戦争遂行の問題、とくに日本軍の捕虜政策の実際、戦争裁判をめぐる問題、そして、日本人として裁かれ、しかし戦後、日本から切り捨てられた朝鮮人BC級戦犯の戦後史。豊富な資料の蓄積から、この問題を多角的に明らかにする。南方の捕虜収容所の凄惨な実態を軸jにしながら、この問題の構造というか重層的な問題を明らかにしている。
朝鮮人BC級戦犯の問題そのものは思い問題である。が同時に、日本の兵士や日本人の戦後の問題でも、その加害と被害の重層的な問題が十分に議論されたり、認識されたりしていたわけではない。だからこそ、この本が教えることはとても多いと思うのだ。
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