総力戦と音楽文化 音と声の戦争
戦争と文化の関係については、関心があって、いろいろな本を読んだり、人に話を聞いたりしている。音楽はなかなか勉強する機会がなかったので、この洋楽文化史研究会のメンバーが執筆した本を読んでみた。
戦争と音楽ということを考えるとき、たとえば音楽家の戦争責任の問題がある。山田耕筰や信時潔についての議論が代表的だけれど、こういう音楽家の戦争責任の問題ではなく、この本は、戦時下に音楽がどのように位置づけられていたのかということを、社会史的な視点から考えようというもの。知らないことがたくさんあって、それだけでもなかなか面白かった。
日本の近代音楽をめぐっていは、西洋と伝統という問題は、古くて、実は現在でも議論される新しい問題である。そのことにかかわって、「国民音楽」だとか「日本的なもの」みたいな角度でずっと論じられ、いろいろな動きがあったことはなかなか興味深い。そのなかでのいろいろな動きが、やがて、総動員体制に組み込まれていく様子が、それはそれでよくわかった。ここで問題にされているような、音楽技法や日本の伝統音楽の評価の尺度としての西洋音楽などの問題は、たぶん山田や信時の音楽をどう考えるかという点でも、きっと重要な問題なのだろうけれど、残念ながらボクにはその素養はない。
日本の音楽の近代化をテコに、「大東亜」でのイニシアチブをとろうとしたことと、一方で、すでに西洋音楽を受容していた、太平洋地域の諸国との矛盾などの問題も、「大東亜」を実相を考えるうえで、興味深い問題でもあった。
仕事がら、どうしても政治の面から文化を見ることが多いボクにとっては、あまり見えない角度からの議論が多かったけれど、逆に言えば、実際に音楽を通しての、戦争動員や支配といくものが繰り広げられただけに、社会構造というものにせまった議論にならないのは物足りなさも感じざるをえない。
そのなかで、音楽教育のなかで、盲学校で、その義務性をすすめる運動をすすめるうえでも、音感報国のスローガンのもと、防空監視員として、生徒を動員していくことをすすめた話などは、あまり知られていないことだけに、興味をもった。
この本では、とくに音楽が国家に組み入れられる過程を、総動員体制の時期に注目して論じている。しかし、実際には、総動員に大きな役割を果たすはずのラジオ放送などは、逆に、この時期には、資源的にも困難に陥り、困難をます国民生活の実態に対応して、国民を慰安するような方向に向かっていったという指摘も興味深い。
一方で、軍歌の隆盛は実は少し前の時期にあたる、海ゆかばは1937年の作品であるし、雪の進軍や軍艦行進曲は、日清戦争直後、戦友は日論戦争直後の曲である。もっとも軍歌がつくられたのは、一五年戦争の開戦前後であると思う。
もちろん、軍歌だけが音楽ではないし、音楽全体を見れば、この本の注目点は重要なのだと思うけれど、ならば、この軍歌の問題などをどう考えればいいのか、などについても、もっと、勉強しないといけないななど、いろいろ関心や疑問をもたされたのも大事な収穫だと思う。
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